おはようございます。
今日はお茶の本の紹介です。
タイトル:山上宗二記(やまのうえのそうじき)
著者:山上宗二(やまのうえそうじ)
執筆時期:安土桃山時代
天正16~18年(1588~1561年)ころ
この本は千利休の弟子である山上宗二が、自分の弟子のために書いた本です。
この本には茶の湯(茶道)の歴史と、茶道具についての教えがあります。
前半の歴史については様々なところで語られていますので、ここでは割愛します。
注目すべきは茶道具の紹介部分です。
茶道具、といえばあなたは何を思い浮かべますか?
・・・
一番最初に思い浮かべるのは、やはり”茶碗”、ではないでしょうか。
茶道と言えばお抹茶、お抹茶が点てられた茶碗を見る機会が多いと思います。
天目茶碗がニュースで取り上げられたことがあり、茶碗の展覧会が開かれることもあります。
茶碗以外のお道具は、茶釜や茶筅、水指、香合、花入、掛け軸、棗などたくさんあります。
そんなたくさんあるお道具の中で山上宗二は、何を最初に紹介しているのでしょうか。
一番最初に紹介するのは、当然、茶道で一番重要な道具のはずです。
「それは茶碗だ!」と思いきや、
実は”茶壺”です。
茶壺、、、なんてマイナーなんでしょう。
(茶壺とは、お茶を保存しておくための容器です。)
山上宗二はなぜ、茶壺を最初に紹介したのでしょうか。
私の推測ですが、茶の湯(茶道)は、お客様に喜んでいただくことに徹しています。
そのためには、美味しいお抹茶を点てたい。これは絶対なんだと思います。
美味しいお抹茶を点てるためには、良いお茶を使うことがとても大切。
良いお茶とは、茶味を損なわないよう保存されている。
そのために重要となるのが、茶壺。
だから何よりも茶壺を優先したのだと思います。
次いで紹介されるのは茶碗ですが、飲み手が美味しいと思うには、視覚からの情報や飲みやすさ、口当たりの良さも大切です。
それで抹茶が直接入る茶碗を次に紹介しているのだと思います。茶道では清潔さをとても大事にしますが、そのことにも通じますね。
そして茶壺の紹介に茶味への影響についても書かれているのも興味深いです。
ちなみに紹介はこんな具合です。
「一 時香
此の壺に贅大小二十計在り。御茶御斤入る。猶お、口伝在り。此の壺を時香と云うは、お茶入るときの香を後まで能く持つ故に、時香と云う。一説、志加と書く。此の壺は珠光の弟子宗珠の一種之たのしみなり。後に豊後太守に渡り、豊後太守より関白様へ上げらるる也。」
「一 兵庫壺
此の御壺、七斤入る。ご本所様に在り。本は荒木摂津守ほり出しの壺也。土くすり見事にて、贅二十計在り。御茶感味、四十石と同じ。」
保存する道具によって味が変わるのです。面白い世界です。
保存容器の違いによる味の変化については、別の機会に書こうと思います。
あまり語られない面白い実験結果が盛りだくさんです!おたのしみに。
※山上宗二記に出てくる「感味」を「閑味」と訳し、お茶の味ではなく、見た目について語っていると解釈する説もあります。
参考文献
「日本の茶書1」
編注者 林屋辰三郎、横井清、楢林忠男
昭和46年12月20日発行
発行所 ㈱平凡社