長野県 安曇野市
西嶋果園
長野県安曇野市でりんごをつくっています。Iターン新規就農者で、4年の研修を経て2016年に独立し経営を開始しました。
主な園地は三郷という地区にあります。最近の気候変動により苦労することが多くなってきましたが、土質や水に恵まれ標高もあるため美味しいりんごが育ちます。これから先も良質なりんごの栽培を続けていくために品種や台木、木の仕立て方を模索しています。
虫の観察が好きで、その結果減農薬に取り組んでいます。美味しいりんごが収穫出来て、なおかつ多種の生物が存在できるような園地をつくることがひとつの目標です。
生産者のこだわり
園地の生物多様性を豊かに
りんご園には本来多種の虫が生息しています。西嶋果園では園主が虫好きのため、美味しいりんごが採れることを前提として、なるべく多種の虫が住めるように努めています。
そのため農薬については殺虫スペクトラムの広い(=多種の虫に効く)剤を極力使わず、選択性の高い(=チョウ目特効やカイガラムシ類特効など)剤を使うようにしています。また、草の刈り方を工夫して虫の住処となる植物も多様になるように努めています。最近は実験的に園地に雑木も植え始めました。
2020年から農薬を徐々に減らしていく取り組みを始めましたが、見られる虫の種類は増えてきたように思います。りんごには多少の被害が発生しますが、今のところ許容範囲内で収まっています(許容範囲も広くなってきました)。
園地の生態系は複雑で、生物種を増やそうと思ってその通りに増えるものでもないのですが、虫に限らず園地の生物多様性はなるべく豊かにしたいと考えています。
2024年 信州の環境にやさしい農産物認証(50-50)を取得しています。
美味しい時期を見極めて収穫
りんごには多くの品種がありますが、一般的な傾向として完熟に近づくにつれて酸味が抜けて品種特有の香りが出てきます。蜜が入る品種であれば蜜の多寡でも香りが違います。そのため同じ品種であっても収穫時期で食味は変わります。また、完熟手前であっても美味しい品種もあれば、完熟の方が圧倒的に美味しい品種もあります。
人によって好みは千差万別ですので、これは西嶋果園がお勧めする食味ということになりますが、その品種の美味しい時期を見極めて収穫するように努めています。基本的には完熟か完熟に近い状態で採ります。
また、りんごは収穫して保存している間にも追熟していきますので、収穫後は冷蔵庫で鮮度を保ち、旬の時期にはなるべく早く発送するように努めます。
信州の環境にやさしい農産物認証を取得した栽培方法
当園は『信州の環境にやさしい農産物認証』を取得しています。
この認証制度は、環境と調和し自然と共生する持続性の高い農業を推進するために、長野県が取り組んでいるものです。
その内容は、地域の一般的な栽培方法と比較して、化学肥料及び化学合成農薬を50%以上(一部30%以上)削減した方法で生産された農産物を認証する、というものです。
当園は今年度化学肥料については90%、化学合成農薬については50%削減の計画です。
化学肥料については化学合成由来の窒素成分が削減対象です。
当園では基肥として発酵鶏糞を使い、補助的に尿素・硫安(化学肥料)を使います。有機質肥料のみだと効果が遅かったり、栄養素のバランスをとるのが難しかったりするためです。有機質は敷きワラや草を刈ることで補給しています。
農薬については削減するのは散布量ではなく薬剤数です。
殺虫剤については園地の観察を行い、不要な薬剤は使わないように努めています。
殺菌剤については菌の観察が難しく、多くの薬剤が治療ではなく予防しかできないため定期的に散布をしています。
除草剤については使用せず、機械除草をしています。
また、化学合成ではない農薬(ボルドーや石灰硫黄合剤、微生物農薬等)に置き換えることでも実質削減をしています。
自然との共生という理念は園主のライフスタイルにも通じるところですので、環境への負荷が少しでも軽くなるような農業を続けていければと考えています。