

北海道 根室市
North Cruise
日本本土最東端の街「根室市」で漁師をしています。主に風蓮湖・温根沼という豊かな汽水湖や根室市と北方領土に挟まれた根室海峡で貝や魚を採っています。
北海道の豊かな湖や海で育まれ、私がこの目で確かめ採ってきた海からの恵みを食卓へいかがでしょうか。
最近はこの地域の漁業や自然との関係を知ってもらう漁の体験やクルーズなどのガイドプログラムも実施しています。
常に、次世代につないでいく、この海のワイズユース(賢明な利用)や持続可能な漁業のあり方を考えて仕事をしています。
生産者のこだわり

■北海道根室市風蓮湖冬の風物詩「氷下待網漁」
氷下待網漁(こおりしたまちあみりょう)とは、文字通り氷の下に小型の定置網を仕掛けて行う漁です。ここ北海道東部根室市のラムサール条約湿地風蓮湖で厳冬期に行われる伝統的な漁です。
湖が氷るのは12月末~1月はじめ。まずは網を仕掛けます。まず氷にチェーンソーで長方形の穴を開け、さらに網の長さに合わせて20m離れたところと、その中間地点にも穴を開けます。次に網の端をくくりつけた棒を長方形の穴から沈め、中間地点の穴を伝って、端の穴へとめがけて送り出していきます。端の穴から引っ張り出した網の端を氷上に刺した木の棒へ固定し、仕掛けが完成。1月から2月中旬まで、仕掛けた網を引き揚げて漁を行います。
風蓮湖は汽水湖(オホーツク海とつながっており海水と真水の交じり合った湖)のために、塩分濃度のバランスがよく、湖面は厚い氷に覆われながらも、水中は適温に保たれているため、このような漁が発達しました。

■氷下待網漁で獲れる恵み
この漁では、主にコマイ・チカ・ワカサギ・キュウリウオ・ニシンといった魚が獲れます。そのほか市場に出ないカレイ、カジカ、ギンポの仲間なども網にかかります。
コマイは、漢字で「氷下魚」と書く。カンカイ(寒海)とも呼ばれるタラの仲間。体長によってゴタッペ(小型)、コマイ、オオマイ(大型)と呼び名を変える場合もあります。
コマイは、干したものを焼いてマヨネーズと七味つけて食べたり、煮つけ、三平汁、ルイベにして食べると美味しいです。
<コマイの一夜干し>
コマイの頭や内臓は取り除いた状態で塩水に漬け込みます。漬け込む時間は2、3時間から半日ほどになります。そのあとは干し。干すことで、身から水分が抜けていきます。干す時間はある程度好みで変更してしまって大丈夫です。一夜干しの状態(ソフト)で食べたり、何日も干したものを食べたりお好みの干物の状態で楽しみましょう

■氷下待網漁オーナー制度の実施
風蓮湖(根室市側)で氷下待網漁を行っている漁師は約10軒。網の設置や引き上げは、1人で行うにはとても手間がかかるもの。高齢化が進み、体力的な理由で辞める人も増えています。
そんななか、NorthCruiseで「オーナー制度」を実施することにしました。氷下待網漁を体験してもらい伝える活動で2018年から始めました。
地元のベテランの漁師の協力を得て、1月中旬から2月中旬の毎週土曜日にオーナーの皆様に集まっていただき、氷った湖の上を歩き網のところまで行き、実際に網上げをして魚を獲ります。参加者は獲れた魚を持ち帰ることもできます。
港で炭火焼きで獲れた魚で作ったコマイの一夜干しなども試食できます。

■希少鳥類「オオワシ・オジロワシ」との関係
漁でカゴが魚でいっぱいになると始まるのが魚の選別。市場で売れる魚を持ち帰り、カレイやギンポ、カジカなどは湖の氷上へ残していきます。
立ち去るとすぐにやってくるのはカラスやトビ。しばらくするとオジロワシが大きな羽をはためかせながら現れ、トビに紛れて魚をさらっていきます。気づけば数十羽を超える鳥が空を舞い、魚を奪い合っていました。人の気配もなくなり最後にやってくるのはオオワシです。
この氷下待網漁で氷の上に残される魚は、希少なワシ類にとって貴重な食糧。漁のおこぼれをたくさん食べ、冬を越せるだけの栄養を蓄えているのです。
北海道にいるオオワシやオジロワシの約3割がここ風蓮湖で冬を越しています。