桃農家さんに聞いた!<桃から見た地球> 気候変動や環境変化を100%の農家が実感。やわらかい桃は食べられなくなる‥!?
食べチョクでは、2024年6月に、桃の農家さんに『桃の栽培に関するアンケート』を実施しました。九州から青森まで、全国25軒の農家さんにご協力いただきました。
「気候変動や環境の変化を感じる」と答えた農家さんは100%。どの農家さんも、桃の栽培を通じて、気候変動や地球環境の変化を感じているという結果になりました。
「地球環境の変化の影響はなく、対策も必要ない」と答えた農家さんは、青森県の農家さん1軒のみ。それ以外の農家さんは、「環境変化の影響を受け、対策を講じている」という結果となりました。
桃から見た地球の「いま」
寒暖差が少なく、害虫が越冬する…「暖冬」が桃に与える影響
年々、暖冬だ、冬でも暖かい、雪が減っているというニュースを耳にするようになりました。
甘味を感じられるおいしい桃づくりには、冬と夏の寒暖差が必要だと言われています。しかし、冬が暖かくなってきていることで、寒暖の差が縮まってきています。
桃にとっての害虫(カメムシや外来種のクビアカツヤカミキリ等)は、寒い冬に死滅していましたが、暖冬により害虫が生き延びるため、害虫対策が必要になってきています。
また、東北など寒い地方では、冬に雪が少量しか降らないことで、春先の土の中の水分量が少なく、桃の木々は喉が渇いた状態で春を迎えるような環境になってきています。
花が咲かない、実らない…「暑さ」が与える影響
花が咲く春先に、気温が上昇してしまうことにより、開花が早まっているといいます。
開花時の暖かさと比べて急に寒くなる、いわゆる”寒の戻り”で、霜の被害も起こりやすくなり、花が結実せず落ちてしまったり、結実しても双果や変形果が多く見られたりという現象が起こっています。
また、暑さは桃の果実の「熟度」を上げるため、桃の実が早くに熟れてしまうといいます。
早い時期から「糖度」が上がってしまい、糖度が高いことで強い日差しで桃が焼けてしまったり、果実が高温になることで逆に甘くならずに高温障害が起こったりと、初夏から夏の暑さによる影響は大きいです。
熟度や糖度を見分けるのが難しいため、特にやわらかい桃は、完熟収穫(完熟状態で収穫すること)が難しくなっているといいます。
配送時に追熟が進んでしまい、柔らかすぎる状態でお客様に届いてしまう懸念や、やわらかすぎる果実を守るための緩衝材の見直しなど、配送の難易度が年々上がっているとの声もあります。
暑さは、従業員や収穫ボランティアの確保にも影響が出ていると、4軒の農家さんが教えてくれました。熱中症リスク、収穫者の高齢化、人手不足。収穫時期の見極めがより難しくなっていることで、さらに人手の確保が難しくなっている状況でもあります。
水不足にゲリラ豪雨、味が薄くなる…「雨」が与える影響
雨が降らない時期が続くと果実に張りがなくなり、逆に収穫前に豪雨がどかっと降ると、桃の糖度が下がり、味が薄くなり、翌日発送できなくなるという声もありました。
台風や強風などによって、傷がついたり落果してしまう等の被害に加え、集中豪雨のようなまとまった雨と、梅雨時期が短くなるなどの乾燥状態が繰り返され、近年の極端な気候に危機を感じるとの声が多く聞かれました。
桃農家さんの対策
日除、灌漑、改植‥対策を重ねている桃農家さん
美味しい桃を育てるために、青森県を除くすべての産地の農家さんが、何らかの対策を講じていると回答されました。
短期的には、切る枝を工夫して日陰を作ったり、桃にかける袋を工夫したり、灌漑設備を作ったり。
長期的な展望を見越して、暑さに強い品種に植え替えたり、収穫時期がばらけるように品種のバランスを変えて植え替えたり、気温の低い高地に農園自体を移すなど、大掛かりな対策を検討している農家さんもいらっしゃいました。
自然相手に、対策が難しいことも
収穫ボランティアさんとの収穫作業の調整と、害虫対策は対策が難しいといいます。
害虫には、一定の農薬が効果的ですが、自然のままの農法を続けたい農家さんの畑の害虫が、周囲の畑に影響を及ぼしていることも少なくないそうです。
美味しい桃の栽培を、今の品種でなるべく自然のままの方法で実現することは、温暖化が迫っている今、とても難易度の高いことであることは、消費者として知っておいた方が良さそうです。
おじいさんの代とは違う…桃農家さんの悲痛の声
桃農家さんの中には、「もう桃は、10年後にこの地域では食べられなくなる」と悲観されている方もいらっしゃいました。
どんなに前倒しに対策を講じても、地球温暖化と極端な天候は続き、年々開花と収穫が早まっていく見通しです。
「先祖代々農地を引き継いできたが、おじいさんの代とは何もかも違う」とおっしゃる農家さんもいらっしゃいました。
来年もあるとは限らない、美味しい桃。今楽しめることに感謝しながら、美味しくいただきたいものです。
私たちの考える、「桃のこれから」
極端な気候で、桃が「夏」の果実ではなくなる?
桃農家さんのアンケート結果からは、全国的に開花から収穫までが早まっていることが分かりました。実際に5月から桃の販売を始める農家さんもいらっしゃり、これまで「夏」に楽しんできた桃の旬が、「初夏」へと早まっていく可能性があります。
じゅわ桃・とろ桃‥「やわらかい桃」がおうちで食べられなくなる?
収穫前の気温上昇が、桃を熟れさせる速度を上げてしまい、収穫時期の見極めが非常に難しくなっているという農家さんの状況もうかがえました。
特に「やわらかい桃」は、熟れると果実がやわらかくなり、よりいっそうデリケートになります。完熟収穫をされる農家さんはもちろんですが、やわらかい桃を美味しいまま配送するために、梱包見直しやクール便への切り替えなど、農家さんの工夫は農園内だけにとどまりません。
おうちに「やわらかい桃」が届いたら、とてもラッキー! 農家さんのおすすめの食べ方で、美味しいうちに味わいたいですね。
硬い桃、が注目されるワケ
新たに注目されている品種の中でも、「硬めの桃」は、扱いやすいと農家さんはおっしゃいます。
桃の香りを楽しみながら、サクトロ感やサクサク食感を楽しめる、硬めの品種の桃や、すももは、熟してやわらかくなりすぎる大変さに比べ、扱いやすいこともうなづけます。
やわらかくてデリケートなじゅわっと汁が滴るような桃のイメージが日本では先行していますが、硬めの桃も、まさに農家さんの工夫の賜物。
やわらかくなるのを待ってしまう方もいらっしゃるようですが、「桃の歯応え」という新しい美味しさを是非楽しんでいただけたらと思います。サクトロ、サクサク桃を、今年は楽しんでみませんか?
最後に
今年は、梅が不作、先日もさくらんぼの高温障害の被害がありました。暖冬、梅雨の遅れ、猛暑、豪雨、真夏の酷暑など、農作物と農家さんは、いち早く地球の変化を察知されています。
桃からみる地球、を考えながら、思いを馳せながら、桃をいただいてみていただければと思います。
食べチョクでは、今後も「農家からみた地球」について、シリーズでお伝えしていきたいと思います。私たち食べチョクや農家さん、食卓で、今できることを長い目線で考えていけたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
「桃から見た地球」以外にも、桃に関する「知らなかった」「なるほど!」な情報を集めた特設サイトも公開中。今年の夏は、食べチョクと一緒に、桃をさまざまな角度から見てみましょう。
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