
花農家さんに聞いた!<花から見た地球> 美しい花々が消える日が来る?花農家が直面する試練とは
私たちの暮らしに、彩りを添えてくれる花々。誕生日や記念日、何気ない日常まで、様々なシーンで私たちの心を豊かにしてくれます。
しかし、近年、花農家さんたちは、記録的な猛暑や気候変動の影響、さらに肥料や燃料などの資材の価格上昇という厳しい現実に直面しています。
食べチョクでは、2024年10月に、花・植物の生産者さんに『花・植物の栽培に関するアンケート』を実施し、全国から16件の農家さんにご協力いただきました。
ほとんどの農家さんが「気候変動や環境の変化を感じる」と答え、どの農家さんも、花の栽培を通じて、気候変動や地球環境の変化を感じているという結果になりました。
容赦なく襲いかかる猛暑
アンケートに答えてくださった多くの生産者さんが、「暑さが原因で、成長に問題が出たり、花が枯れたり、軟弱になったりしている」と、厳しい状況を話してくださいました。
また、「今年は猛暑が長く続き、暑さに強くない品種が枯れてしまうなど、深刻な影響を受けた」といった切実な声も寄せられました。
これは、単に花が育ちにくいというだけではなく、もっと深刻な問題があることを示しています。
母の日の定番、ピンクや深紅のカーネーションも、夏の強い日差しと容赦ない暑さには耐えきれず、生育に影響が出ています。
また、季節外れの暖かさが、繊細な花の品質を不安定にして、生育だけでなく、仕上がりの品質にも影響を及ぼしています。
まるで、地球の体温が上がりすぎたせいで、花たちが本来の美しさを発揮できずにいるかのようです。
過酷な夏のハウス
ハウス栽培を行う花農家さんにとっても、夏の暑さはまさに試練です。
ハウス内の気温を下げるため、日差しを遮る細かな作業が欠かせません。
バラ農家さんは、半年近くも続く暑さとの戦い、そしてその影響の長期化に頭を悩ませています。
「今年は猛暑で風通しの悪いハウスでは思うように育ちませんでした。」と、暑さ対策の難しさを痛感しています。
花農家さんは、長引く高温との厳しい闘いを強いられているのです。
家計を圧迫する資材高騰
花の栽培に必要な肥料や資材の価格高騰も、花農家さんの負担になっています。
多くの生産者さんが、「あらゆるものの価格が上がってしまった」と口をそろえて話しています。
カーネーションの生産者さんからは、「値上げはしたけれど、それでも厳しい状況です」と、価格を上げることの難しさや悩みが伝わってきます。
大切に育てた花を、どうしても値上げしなければならない、そんな決断をする農家さんたち。そして、「値段を上げたことで売れなくなるかもしれない」という不安も、いつも心の中にあります。
【対策と想い】それでも花を咲かせたい
知恵と工夫で立ち向かう
この厳しい状況を乗り越えるため、花農家さんたちは様々な工夫を凝らしています。
強い日差しを避けるための遮光ネットの利用や、冷却設備を導入したり、夜間の冷房を行ったりと、温度管理に力を入れています。
しかし、そうした対策も費用の面で難しいことが多く、思うようにできないという声もあります。
また、暑さに強い花へと品種を変える動きも広がっており、多くの生産者さんが栽培する花の種類を見直しています。
リンドウのように、特定の時期に需要が高まる花では、その時期に合わせた品種に切り替える取り組みも進んでいます。
さらに、昔から露地で育てられてきた花については、暑さを避けるために標高の高い場所へ畑を移すという工夫も行われています。
栽培方法の工夫も重要です。
たとえば、苗を植える時期をずらしたり、日よけを使ったり、いつもより早めに苗を植えたり、大きく育ててから畑に植えたりと、様々な工夫が見られます。
また、夏に咲く花では、暑さを避けるために早朝に収穫するという方法をとっている農家さんもいます。
高騰するコストとの戦い
資材の価格が上がるなかで、花農家さんたちは、梱包をシンプルにしたり、廃菌床を活用した有機肥料で育てたりと、環境にも配慮しながらコストを抑える工夫をしています。
また、原材料の高騰に対応するため、さまざまな角度から資材全体の見直しやコスト削減にも取り組んでいます。
厳しい経済状況のなかでも、生産者さんたちは日々、できる限りの工夫を重ねています。
美しい花のある暮らしを守るために
このまま気候変動が進めば、私たちの身近な花たちはどうなってしまうのでしょうか。
暑さに弱い花は育てるのが難しくなり、これまでのように一年を通してさまざまな種類の花を楽しむことが難しくなるかもしれません。
たとえば、暑さに弱いトルコキキョウや、畑で育てられるリンドウは、限られた地域や時期にしか出回らない、貴重な花になる可能性もあります。
資材費の高騰は今後も花の価格に影響を与えて、気軽に花を楽しむことが難しくなるかもしれません。
私たちにできること
未来も美しい花と豊かな暮らしを繋げていくために、私たち消費者にできることは何でしょうか。
それは、花農家さんの現状を知り、環境に配慮した栽培に取り組む農家さんを積極的に選んで購入することかもしれません。
食べチョクでは、農家さんのこだわりや想いを直接知ることができます。
顔が見える関係性は、私たちが花を選ぶ際の、大切な指標となるはずです。
また、花を長く楽しむために丁寧な手入れをすることも、大切な一歩です。
そして、地元の花を選ぶことは、地域の花農家さんを直接応援することに繋がります。
たとえば、地域の農家さんから直接花を購入することで、輸送距離を短縮でき、環境負荷の低減にも貢献できます。
花農家さんの想いを知ることから、私たちの行動は変わるはずです。
花と、地球と、私たちの未来
今回のアンケートを通して、日本の花農家さんたちが、気候変動という大きな影響に悩まされながらも、花への情熱を絶やすことなく日々奮闘していることがわかりました。
花農家さんの実情を知ることは、私たちがこれからも美しい花のある暮らしを続けていくために、大切な一歩となるでしょう。
花を手にする時、その背景にある物語を少しでも思い描いていただけたら幸いです。
食べチョクでは、今後も「農家からみた地球」について、シリーズでお伝えしていきたいと思います。私たち食べチョクや農家さん、食卓で、今できることを長い目線で考えていけたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
「花植物から見た地球」以外にも、花に関する「知らなかった」「なるほど!」な情報を集めた特設サイトも公開中。今年は、食べチョクと一緒に、花をめいっぱい楽しみましょう。
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