『職人魂』と『商人魂』
2024/12/21
お世話になります、島根県邑南町(おおなんちょう)の寺本果樹園の寺本直人です🧑‍🌾ありがとうございます!
今日邑南町は-4℃というここ一番の気温をマークしました🥶確かに寒かったです…!しかし、そんな寒さを超えるほどの冷や汗をかきまして。「寒さ対策を忘れてたせいで畑の精密機械が壊しかけ、35万円の損害を出しかけた」ことが発覚し、肝が冷えました😂うっかり屋さんなのは小学校の時から変わってないようです👍


さて、今日は「『職人魂』と『商人魂』」についてお話しさせてください。


今日は一日、姉ちゃんと「寒いなぁ寒いなぁ」言いながら、壊しかけた精密機械の整備や各システムの寒さ対策や、先日お話したブドウ剪定の続きをやっていました。

こういったいわゆる「農作業」をやっていると、お恥ずかしい話ですがついつい「お客さん」のことを忘れてしまうタイミングがあります。

これはここで話す話題かどうか悩みましたが、正直にお話しします。

全ての農家さんがそうでは無いと思いますが、農家をやっていると栽培など「モノ作り」に熱中するあまり、モノを作るまでをゴールとしてしまうことがよくあります。

僕が出会ってきた農家さんはこういう人が多かった印象です。

いまでこそ僕は「お客さんに直接届けたい」という思いで農業をやっている一面もありますが、元々は「いいモノ作りたい!いいモノが作れたらそれでいい!」という『職人』に憧れて農業をやっていました。

その職人魂は絶対に忘れたくないのですが、その気持ちが強すぎるあまり「お客さんに直接届けたい。美味しいものを届けたい。」ということを忘れてしまうことがたまーにあります。ごめんなさい🙇‍♂️

なので、今日は改めて「僕がどういう農業をしたいか。」について、自戒の意味も込めて、整理したいと思います。ここまで前置き、長くてごめん!!🙏

現在寺本果樹園の目指している農業は、「お客さんにちょっとでもいいから農業を通じて幸せになってもらうこと」を目標にしています。

そしてこの「ちょっとした幸せ」を達成するために『品質』にこだわっています。さらにこの『品質』を3つに分けて、それぞれ力を入れています。

寺本果樹園の3つの『品質』
①味
・当たり前ですが、「おいしい」を追い求める。お客さんに「おいしいね!」といっていただくために、栽培方法や肥料など日々研究する。
②見た目
・味と見た目は二律背反で語られることが多いが、味だけでなく見た目もこだわる。「二兎を追って二兎を得る」を目指す。
③鮮度
・実は一番気にしているポイント。流通の関係で「収穫してから数日経ったもの」ではなく、「産地直送、農家直送の新鮮な野菜や果物」を届けたい。これが一番うまい!!

ざっとですが、こんな感じです。
(これとは別に、「子どもたちにおいしい思い出を届けたい」という理念もありますが、ここでは割愛。また機会があればそのお話も🙌)

そしてこの「お客さんを幸せにしたい」という気持ちを、僕は『商人魂』と(勝手に)呼んでいます。

『商人』(ビジネスマン)と言うと、人によっては「金の亡者」「銭ゲバ」「お金大好きな卑しいヤツ」という人もいます。

もちろん「金の亡者」「銭ゲバ」「お金大好きな卑しいヤツ」な『商人』もいます。

でも僕はそんな人を『商人』と言いたくはなく、僕が思う『商人』は、「人をどれだけ幸せにするか、人の不幸をどれだけ取り除けるか」だと思います。

そして、そんな『商人魂』ももって農業をしています。

前までの職人に憧れていただけの僕は、
「どれだけいいモノを作れるか(秀品率を上げられるか、収穫量を増やせるか)」
で農業していました。

現在の僕は、
「どれだけいいモノを作れるか(味をよくできるか、見た目をよくできるか)」
「どれだけお客さんに喜ばれるか(農家直送できるか、お客さんの幸せで語れるか)」
で農業をしています。

もちろんこれ以外の考えで農業している部分もありますが、今日は大事な一面を忘れて作業に没頭していたので、自戒のために改めて表明しました!

いいモノを作る『職人魂』と、お客さんを幸せにする『商人魂』。
どちらも忘れず頑張ります!

というわけで、「『職人魂』と『商人魂』」というお話しでした!


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ここからは関係のない『僕の雑談・感想』です。

今日も1日寒い中で畑作業を頑張った後、夕方〜夜にかけて「ビジネスの勉強会」的なものに参加してました。

これは、どこかの会場に集まってみんなでやる的なやつではなくて、オンラインでその勉強会に参加する的なやつでした。

その勉強会で一番勉強になったのが、「一貫したコンセプト」でした。

簡単にいうと、「どんなことを胸に決めてお仕事するのか、どんなことをお客さんに約束するのか」といったものです。

この話を聞いて、今日の本題であった「お客さんを忘れてはいないか?」といったことを思いました。

結論としては、「今日忘れてしまっていたので、自戒の意味も込めて、ちゃんと胸に決めたことを表明しよう」と記事にさせていただきました。

そしてこの勉強会で僕が強く思ったことがもうひとつ。

「農業で生きていくことの難しさ」です。

めちゃくちゃ割愛してお話しますが、この勉強会で「事業規模の拡大」というお話もされてました。

めっちゃ汚く乱暴に、簡単にいうと、「どうやって今以上にお金を稼ぐか」みたいなことです。

ここではざっくり「お金をいただけるサービスをお客さんに提供できたら、そのマニュアル(サービスの手順書、接客対応の説明書など)を作って、人を雇って、サービスの規模を大きくする」といった説明されてました。(僕の解釈です!間違ってたらごめんなさい🙇‍♂️)

僕は「確かに!」と思いながら自分に当てはめて考えてました。

しかし、考えれば考えるほど農業では難しいなと思いました。

マニュアルを作るのが異常に難しいからです。

例えば「イチゴを収穫する」というマニュアルだけでもパターンが何種類もあります。
秋と冬と春では収穫のタイミングが違います。さらに各季節でイチゴの果実は顔色を変えます。「赤いイチゴ」もあれば「うすら赤いイチゴ」も「ちょっとピンクのイチゴ」も「白に近いピンクのイチゴ」もあります。

さらには「果実が赤いイチゴ」もあれば「種が赤いイチゴ」もあります。しまいには、「収穫してそうな雰囲気をしているイチゴ」がほとんどです。明確な基準ではなく、果実や種の色やイチゴの肌感、ツヤ感や雰囲気など、本当にケースバイケースで収穫しています。

現にこの「収穫基準」を決めるのが難しくて、パートの方と一緒にあーでも無いこーでも無いと話し合いながら、パートの方に「イチゴの収穫」を覚えていただいてます。

「イチゴの収穫」だけでこんなにお話しできます。もっともっとお話しできます。

そしてもちろんイチゴの作業は「収穫」だけではありません。

「苗管理」や「定植」、「水やり」、「肥料やり」、「葉欠き」、「ドロ芽欠き」、「ランナー取り」、「摘果」、「カビ取り」、etc…etc…

そしてうちは「イチゴ」だけでなく「ブドウ」や「トマト」も栽培しています。そして各作物に同じくらいの作業量や種類があります。

そして、作物を作るだけでなく土台である「土」も作ります。水やりのための「配管」もあります。「電気」だってあるし、「ハウス建築・工事」だってあります。

それらを守るために「台風対策」や「雪対策」、「凍結対策」や「猛暑対策」だってあります。

これら以上にもっともっともっともっとやることはあります。

何より相手にしているのは「植物という生き物」で「日々変わりゆく天気」です。

しかも栽培は大体年一回で、「何回も挑戦できるもの」ではなく「年一回しか挑戦できないもの」ばかりです。10回挑戦するためには10年頑張らなければならないのです。

こんなことをマニュアルとして渡せるでしょうか?
果たしてこの仕事量を渡して辞めずにいてくれるでしょうか?

そしてこんなこと言いたく無いですが言います。こんなこと書いてる今の僕の気持ちはどす黒い気持ちでいっぱいです。

「こんなにやること多くて大変で安定しないのに、生活費を稼ぐのすら難しい」

僕が栽培してたブロッコリーは、1株あたり手元に残るお金は20円くらいでした。僕が40度にもなる灼熱のハウスで手にしたトマトの利益は、1玉あたり20円くらいでした。

農家に求められる技術量と行動量と気合いと、それに見合った対価は「とてもアンバランス」で狂っていると僕は思いました。

こんな「アンバランスな対価」の中で規模拡大したら、従業員さんにも「アンバランスな対価で、異常な技術量と行動量と気合い」を求めなければなりません。

そんなの従業員さんを不幸にするだけです。最後に困って死ぬのは僕だけでいいです。

農業という仕事の難しさに直面し、農業という仕事の「絶望」という現実を改めて目の当たりにした夜でした。

もちろんやり方はあるはずだし、まだまだ僕が未熟なだけです。
また明日から希望を求めて頑張ります。
情けない話と湿っぽい話ですみませんでした。

というわけで、『絶望』という僕の感想でした。
最近寒いので、みなさんご自愛ください。

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この投稿をした生産者

島根県 邑智郡邑南町中野小原迫900

寺本果樹園

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