【ツクヨミ小噺003】
2024/02/19
前回はリジェネラティブ農業がどうして注目されているのかというところでした。
温暖化や気候変動の良い悪いはおいておいて、単純な農業の大規模化(化学肥料や化学農薬の濫用、農業機械の大型化)は、持続的な社会に様々な課題を残しています。
他にも深掘りたいところはあるのですが、
今回はそもそもリジェネラティブ農業(不耕起栽培)で炭素は土壌に貯留できるのか?
というところです。

ツクヨミファームの土壌検査結果の画像を載せています。
地域が4つあり、神山町の3つの生産者と阿波市がツクヨミファームです。
土質は単純ですが、非火山灰土で4地点とも共通。
ちなみに日本の畑の半分近くは火山国らしく、火山灰土(黒ボク土)でできています。

作物は一般的には1つの畑に1つの作物を作るのが効率がいいと考えられています。
対して、ツクヨミファームは多品種という記載です。
これはリジェネラティブ農業のもう1つの特徴で、1つの畑で複数の植物を育てているという形です。
ツクヨミファームではもう1段複雑になっていて、畑の中には野菜が育っている台形とかかまぼこ状の山(畝)があり、
1つの畑にレタスの畝、ブロッコリーの畝、大根の畝、人参の畝という風に棲み分けているのが通常ですが、
ツクヨミファームの場合は、1つの畝にブロッコリーとレタス、大根、人参が育ってる形の多品種です。

特徴的な項目が、
全炭素、無機態炭素、有機態炭素で、土壌にどれだけ炭素が含まれているかとその内訳です。
3%以上あると良いとされ、神山町の生産者は2%強、神山町周辺農地の平均は1.7%前後です。
ツクヨミファームは3%強と堆肥(炭素源)などを土の中に混ぜ込む有機栽培よりも多くなっています。
ツクヨミファームと同じ阿波市周辺農地の平均は1.8%弱なので、耕さないことで4‰(0.4%)ではなく、2倍近くに増やす、貯留できていることが分かります。

漢字間違えていますが、腐植率も上回ることができています。
腐ると書いてても、アブナイものじゃなくて、有機物が分解された後の残りカスだと考えてもらえれば。
畑の色も黄色っぽかったり、白っぽかったりと様々ですが、黒い土ほど腐植が多く含まれています。
日本での黒い土=黒ボク土は九州や関東から北側、北海道に多く、日本の畑の半分近くを占め、
水はけも水持ちも良く、土が硬くないので、畝を作りやすいといった風に加工しやすく最高の物理性を持っています。
ただ、火山灰性での腐植なので単純にいいワケではなく。。。
これが日本の農業にとって悪魔的な相性だったわけですが、ここはまた長くなってしまうので別の機会に。

話を戻して、腐植の一種でフルボ酸、フミン酸なら化粧品やサプリメントに配合されたりもしているので、知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
5%以上あることが望ましいとされ、
腐植が多いと微生物の繁殖や、水はけがいいのに水持ちもいいといった土壌の不思議な状態、
「団粒化」を促すと同時に養分の流出を抑えたり、植物が吸収しやすいようにする働き、重金属などを吸着し、植物に吸収されにくくしたりと様々な役割を持っています。

pHも一般的な農業の様に石灰等を投入しないでも、腐植が急激な変化を緩和してくれるため、人為的に調整する必要なく理想値を維持することができています。
(7が中性で7より小さければ酸性、大きければアルカリ性。理想値は6〜6.5)

全窒素はおかしい^^;
C/N比(炭素と窒素の比率)を見れば、小数点の位置が間違っているのが分かりますが、有機栽培よりも少し少ない位。
なのに!
堆肥をすき込めば増える可給態窒素は、不耕起でも有機栽培に負けず劣らずなんです。
(可給態窒素は植物には直接利用されないと考えられてますが、微生物の働きで植物に利用される形態に変化できる有機性の窒素のこと。なので化学肥料の投入では増えません)

不思議な状態はまだ続きます。
土壌密度平均は1が中心で、1より大きくなれば水はけが悪く、粘土の様な土壌。
1より小さくなれば、水はけが良く、黒ボク土の様な土壌。
と思っていただいて、神山町の生産者さん、1.03、0.94、0.91、ツクヨミファームは0.85とかなり良くなっています。
でも、含水率や最大保水容量は変わらない。
水はけが良く、水持ちも良いということが分かります。
腐植以外の要因は耕さないことで、植物の根っこがそのまま残っていること。
役目を終えた根っこは微生物に分解され、根っこがあった場所は空洞となります。
この空洞を空気や水、新しい根っこが伝っていきます。
トラクターを使う必要がありません。
ちなみに阿波市周辺農地の平均は1.07、神山町周辺農地の平均は1.11。
黒ボク土だと0.6〜0.7台が多いかと思うので、かなり黒ボク土の様な物理性に近づいています。

とか何とかいっちゃって、内緒で化学肥料を使ってもそもそもこの数字を作りえないし、じゃあ内緒で耕して堆肥など混入させてるんじゃないの?
というのも全微生物数で分かります。
ツクヨミファームの数字は有機栽培の生産者さんより少ないです。
なぜなら不耕起だから、有機栽培の様に堆肥や有機物を混ぜ込むことで微生物が分解し増えるためのエサの供給も無いからです。
土壌中に堆肥や有機物を混ぜ込む環境変化がない上での自然な数字と言えます。
減農薬など適正な管理をされているところでよくあるパターンが、もう1桁少ない数100万、悪いと数10万、土壌消毒などやっているとゼロに近づいていきます。。。
BF値は糸状菌(主にカビなど)とそれ以外の菌の比率で、非常にバランスが良いと言えます。
植物に悪いイタズラをする主な菌が糸状菌(非常に有用な糸状菌ももちろんいます!)で1000を切ると連作障害など様々問題が噴出し始めます。

種蒔きや定植のタイミングが遅れて思った様に行かない時ももちろんありますが^^;
届いたお野菜が意外と大きかったりするので、本当に無肥料なのか?などお問い合わせをいただくこともありますが、
微生物の働きや環境を意図的にコントロールすることで、有機栽培に引けを取らない養分供給を行えているからです。
ある意味無肥料とは言えないレベルですが、化学肥料や有機肥料の様な人為的な供給は行なっておりませんm(_ _)m

といってもまだ最低限の管理で、まだまだ品質の向上余地があります。
ツクヨミファームは肥料を使ったり耕すことをしないで、周辺農地とは全く別物の土壌を狙って作り出すことができました。
人は自然に逆らうことはできませんが、自然をコントロールというか誘導というか、天災はもちろん抗いようがありませんが、植生をコントロールすることで意図した結果(土壌以外に生物多様性など)を導くことはできます。

現状は取り組んでいる生産者はほぼ皆無に等しいですが、リジェネラティブ農業は日本の農業の課題を根本的に解決できる大きな可能性があります。
どうしてリジェネラティブ農業が農業の課題を根本的に解決できるのか。
次回からは日本の農業の課題を深掘っていきたいと思います!
長々となりますが、引き続き何卒宜しくお願いいたしますーm(_ _)m

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