
【食べチョクアワード2024 ~未来につなげる~受賞者座談会】受賞者が語る未来への挑戦
2024年に人気のあった生産者を表彰する「食べチョクアワード2024」において、5組の受賞生産者さんに、食べチョク代表 秋元里奈が、「未来につなげる」をテーマに、受賞した2024年の振り返りと、今年の抱負・目標、今後の展望について、座談会形式でお話をうかがいました。
参加された生産者さん
2024年の振り返り、2025年の目標とは
秋元) 受賞された2024年はいかがでしたか?2025年の目標について教えてください。
F.F.HIRAIDE 生産担当・代表 平出賢司さん) 夫婦で生産と販売の役割を分けて担当しています。私は生産担当の立場から話せればと思います。2024年の猛暑は、花栽培に適さない厳しい環境でした。そこで昨年、夜間冷房設備に投資し、栽培面積の半分を「夜冷」対応できるようにしました。
しかし、冷房によるエネルギー消費量の増加が新たな課題となりました。そのため、全体的なエネルギー削減のために、土壌消毒をエネルギーを使う従来の方法から自然由来のものに切り替える工夫をすることで、昨年または一昨年を下回る水準で抑えられました。今年は、更なる冷房面積の拡大を予定しています。
作柄の変更など挑戦も多いですが、エネルギー消費量を削減しつつ生産量を増加させるという、一見矛盾する目標を、生産担当として実現を目指します。
F.F.HIRAIDE 平出美樹さん) 今年は、生産と販売の連携を工夫していきたいと思っています。お客様に「この品種が収穫できるよ!」とお知らせしたタイミングで、あっという間に収穫が終わってしまい、買えないお客様が出てきてしまうということがありました。
今年は栽培計画に合わせて、お客様に収穫時期を早めにアナウンスすることで、販売機会を逃さないようにしたいです。
当社の強みは、品種の多さです。10品種くらいを栽培しているのが一般的な生産者ですが、当社では50~60品種を作っているので.......ちょっと「イカれてる」と思っています(笑)。突き抜けたことをやっているので、それをお客様にも知っていただきたいですね。
アワード当日の会場を彩ったF.F.HIRAIDEさんの”ユリさん”
石野水産) お客様のニーズは常に変化していますね。物価高の影響で購買行動も変化していると感じています。
ECで食材を購入するお客様の予算は限られていますから、送料や品質など、選ばれる必要があるんです。「ここに頼んでおけば間違いない」と思ってもらえるところまで来ないと、厳しいと感じています。
今年は、お客様が「欲しい!」と言ってたものをもうちょっと商品化していきたいですね。
また、広島の現地ではゲストハウスとかシェアハウスといった体験も提供しており、関係人口を増やそうともしています。例えば、去年は新造船で餅まきをやりました。
商品だけはなく、関係人口を増やし、体験やニュースもセットで「石野さん」というストーリーを作っていきたいと思っています。
※餅まきとは:新築で家を建てる際に行う“上棟”(じょうとう)という工程が無事に終わったことを祝って餅をまく行事のこと。地域によっては、新造船でも行います
薄羽養鶏場) 去年1年間を振り返ると、一番痛感したのが人手不足ですね。採用も思うようにできなくて、12月に注文がたくさん入った際に、上手く回らなくて...。人手不足を痛感しました。
そこで作業工程の中でどこに一番時間がかかるかを考えてみたんです。洗卵と選別作業に時間がかかると分かって、洗卵選別機を導入し、大幅な時間短縮ができました。とにかく人手不足に悩んで、その解決策として、自動化を進めた2024年でした。
今年は、やっぱり酷暑対策をしていきたいですね。鶏への暑さ対策は重要で、うちは新しい鶏舎と古い鶏舎の2つを使っているんですが、新しい方は空調完備で快適ですが、古い方は空調がないんです。その古い鶏舎に若鶏を入れる時期が、ちょうど夏の暑い時期にぶつかるんです。
若鶏は、たくさん食べて大きくなって、良い卵を産む準備をするんだけど、暑すぎると食欲が落ちて、体が大きくならなくて、そうなると、良い卵を産めなくて...
だから、鶏舎の入れ替え時期を調整して、夏の暑い時期は若鶏を新しい鶏舎に入れるように変えていこうと思っています。
秋元) 夏の暑さは皆さん共通の課題ですね。これから涼しくなることはないと考えて、設備投資をしなければなりません。目に見えないコストもかかりますし、オペレーションも変えなければなりません。今まで通りに作ることさえ、かなり大変だとお話を聞いて感じました。
薄羽さんが採用広報の取り組みで作成されたオリジナルパーカー
ふぁーむbuffo) うちは広島の山の方なので、夏は涼しい方なんですが、去年は初めて夏の暑さの影響を感じましたね。このままだとちょっとまずいなと....。
暑さ対策を検討する時間を取るために、作業効率化のための投資を進めました。
今年は、効率化によって生まれた時間を使って、より良い環境を整えたいと思っています。うちの鶏舎には、特別な暑さ対策の設備はないんです。基本的には、自然に近い環境で育てています。暑い地域の平飼いで養鶏している生産者さんから話を聞いて、空気を循環させるなど、何かできることがないかを探しています。
それと、石野さんと似ていますが、交流や体験をしてもらう機会をもう少し増やしたいですね。なので、そういった場を整備していきたいです。
安曇野ファミリー農産) 私達は、二年前の2023年は本当に不作で…2024年は、もう背水の陣で臨んだんですよ。暑かったですが、前年から水やりをしっかりやっていたこともあり、豊作でした。販売自体もECサイト上でほとんど売り切れるようになりました!
販売の工夫としてNotionで販売マニュアルを作り、販売業務を効率化できました。
今年は、生産に関するマニュアル作りにも力を入れていきたいと思っています。
アワードで受賞させていただきましたが、自分たち目線ではまだまだです。もっと良いものを作っていきたい。ただ、私一人で全てのりんごの木を見るのは不可能なので、もっと良いりんごを持続的に生産するためにも、他のスタッフが本質的なところから技術や知識を習得できる生産マニュアルを作りたいと思います。
環境の変化に適応し、持続的に生産していくためにできること
秋元) これまでもお話されていましたが、これからも環境変化は継続的に起こっていくと思います。生産者として未来に持続的に繋げていくためにはどう考えていますか?
食べチョクは付加価値を反映しやすいサービスですが、付加価値へのアンテナは直近5年くらいで社会的にも高まっていると感じています。付加価値の付け方や、こだわりの伝え方も、これから変化していくと感じていますがいかがでしょうか。
石野水産) 私は、付加価値を付けようというよりも、お客様のことを考えて丁寧に、を意識していますね。
食べチョクでは、他の生産者さんの商品や写真、お客様レビューを見られるので「ああ、こういうのが良いんだ」と学べるんですよね。だから、別の品目の生産者のレビューを見て、「こういうのだったら、うちでもできるんじゃないかな」といつも考えています。
購買行動や顧客ニーズはこれからもどんどん変わっていくので、そういったところも把握して、どんな梱包にしたら、こんな文章・写真を添えたら、お客様は喜んでくれるかな?どんな気持ちになるかな?と考え工夫していくことが大切になると思っています。
秋元) お客さんが変わってきた感じがある、と気づけるのはお客さんを見ているからこそ、感じられると思います。ちょっと節約志向が出てきている、と先ほどお話しがありましたが、他の皆さんはいかがですか?
薄羽養鶏場) 私の場合だと、サイズが小さい規格外品を「卵かけごはんにちょうどいいサイズ」として販売し始めたんです。そうしたら、今まであまり購入していなかったようなお客様に買っていただけるようになったり、逆に正規品の売り上げが少し減ったりして…。やっぱり、物価高の影響は少なからずあるんだなと感じています。状況に合わせてお客様のニーズに合った商品を作っていくことは大切だと思っています。
秋元) 社会のトレンドで、今まで刺さらなかった商品も刺さるようになったとかはありそうですね。そこに慣れてしまうと、正規品が売れなくなる、といったことは起こりやすいので、そのバランスは、皆さんそれぞれ悩まれているところだと思います。お花の場合はいかがでしたか?
F.F.HIRAIDE) お花って、規格外品を販売するのが難しいんですよね。お客様への説明も難しく、ECサイトでは正規品しか販売していません。
弊社は、値上げをしました。球根の単価がコロナ前に比べると1.5倍になってしまったためです。単に消費者の価格帯に迎合して、そこに合わせてしまうと、本来の価値が伝わらないですし、持続的な経営になりません。
ユリは高いお花なのですが、私たちは全国にユリの輪を広げていきたいと思っていて、いろんな人に家で飾ってほしいという思いがあります。
これからもお客様にユリの価値をしっかり伝えていく必要があると思っています。
秋元) 令和の米騒動などもあって、値上げを許容する消費者が増えている印象もありますが、実際のところ価格変更は難しいですよね。
ふぁーむbuffo) 私は個人で農業をやっているので、今後持続的にどう生産するかは、結構大きな課題になっています。自分がだんだん体力が落ちてくると、今の農業をどうやって続けていくのかが課題で…。そこを今考えながら、やっている段階です。
機械を導入するとか、効率化を進めるとか、体に負担がないような作業に変えていくとか、人を雇うとか…。でも、そのためには売上をもっと上げないと…と考えますよね。でも、物価高騰もあるし…。お客様に届けるものの品質を落とさないままに、どう持続的な生産ができるのか工夫していきたいと思います。
安曇野ファミリー農産) 私は、世代間や農家間の人の交流をもっと増やす必要があると思います。
元々学生の時、私も食べチョクみたいなサービスを作りたかったんです。でも、その時はテクノロジーもなく、同じ思いを持った人とも出会えず、挫折しました。
でも今は、テクノロジーが発展して、いろんなことができるようになっていますよね。
ただ現状として、世代間・農家内でも、そういったことに関する知識の差があるのは事実です。そのような知識差分が埋まっていくと良いなと思っています。
今はテクノロジーの力で、人の交流や知識共有が容易になってきています。だから「もっとこうなったら良いな」と思っていることを、自分で動いてみる。いわば「打席に立つ」ことが、一次産業に関わる人間には必要だと思います。
秋元) 人と人が交わることで、化学変化が起こりますよね。そういった機会を生み出せるような場所や仕組みを作っていくのも、私たち食べチョクの役目だと思います。このアワードも、そのきっかけになれば嬉しいです。
結びに
食べチョクアワード2024を受賞した5組の生産者さんに、2024年の振り返りと2025年の展望をうかがいました。
猛暑や物価高、人手不足など、生産現場は環境の変化に直面しています。変わりゆく顧客ニーズに答えながら、そういった環境の変化に適応し、持続的な生産を実現する様々な取り組みを聞くことができました。
特に、人と人との関わりがこれからはより大切になっていくと感じています。それは、生産者とお客様、生産者と生産者、生産者と従業員はもちろん、お客様とお客様も含まれると思います。食べチョクがそのような交流が生まれる一つの場となれるよう、食べチョクをより良いサービスにしてまいります。
座談会に参加してくださった生産者さんの商品はこちらから
「食べチョクアワード2024」受賞生産者さん
食べチョクアワード2024を受賞した生産者さんはこちらから
https://www.tabechoku.com/feature_articles/award2024_jyushosha
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