【食べチョクアワード2024 ~未来につなげる~受賞者座談会】生産者と食品ロス削減を語る #9

2025/01/29 更新

2024年に人気のあった生産者を表彰する「食べチョクアワード2024」の授賞式会場において、今年と昨年の5組の受賞生産者さんをお招きし「特別企画 生産者と食品ロス削減を語る」と題した座談会を開催しました。

食べチョクアワード2024

脱炭素社会の実現に向けて「食品ロス」の削減は取り組むべき重要なテーマです。食品ロスを大別すると、生産や流通の現場で発生する「事業系」のロスと、家庭の調理や廃棄によって発生する「家庭系」に分けられますが、どちらも生産者と消費者の協力なしでは削減できないと考えます。

そこで今回は、消費者と日々つながっている受賞生産者の皆さんをお招きし、①現在取り組んでいる食品ロス削減の取り組みと、②食べチョクを活用してもっとロス削減を加速させるアイディアをうかがいました。

農産、畜産、水産、花きと、分野を越えた生産者が一堂に会して意見を出しあう貴重な企画です!果たしてどんなアイディアが生まれるのか…ぜひ最後までお楽しみください。

今回登場する生産者さん

画像左より)

① 食べチョクアワード2024「総合」第1位「水産物部門」第1位
広島県「石野水産」石野 智恵さん

② 食べチョクアワード2024「畜産物部門」第1位
広島県「ふぁーむbuffo」岩﨑 奈穂さん

③ 食べチョクアワード2024「そのほか各種部門」第1位
栃木県「F.F.HIRAIDE」平出賢司さん、美樹さん

④ 食べチョクアワード4年連続果物部門1位&殿堂入り
長野県「安曇野ファミリー農産」中村 隆一さん

⑤ 食べチョクアワード2023「総合」第2位「畜産物部門」第1位
栃木県「薄羽養鶏場」薄羽 哲哉さん

はじめに、皆さんが扱う品目で、どのようなロスが発生するか、教えてください

F.F.HIRAIDE)我々がつくっているのはユリなので「食品」ロスとは離れますが、花は規格が厳しいのです。出荷できないものや流通に乗らないものが多くあります。そういうものは必ずお得なパック花などにして、正規品とは分けて売ります。正規品ではないアウトレット品なので、自社店舗では売らないようにしていますね。

安曇野ファミリー農産)それは面白いですね。我々は長野県でりんごを主に生産していますが、直売所では規格外品がむしろ人気です。すぐに食べたい、安く買いたいというニーズがあるようですね。規格外品の割合は大体12%程度です。昨年は気温が高かったため、色がつかないなどの理由で規格通りに売れないりんごも増えました。

石野水産)果物は生鮮だから訳ありになりやすいですよね。うちで作っているちりめんは加工品ですが、それでも訳ありや、乾燥機の中に残ったものなど食べられないものも発生します。食べられるものにはランクを作って販売していましたし、食べられないものも肥料として使っています。実は、ふぁーむbuffoさんのところでも、海産物を使った飼料が使われているんですよね!

ふぁーむbuffo)そうなんです。養鶏を営んでおりますが、同じ広島県ということで、近場から飼料を仕入れたいと思っておりまして。人間が食べられないものでも、鶏にとっては良いエサになるんです。

薄羽養鶏場)私のところも養鶏ですが、割合としては少ないのですが割れて白身が出てしまったり、黄身が見えてしまったりするタマゴが、ロスとして出たりしますね。それらは微生物が分解する分解機に入れて肥料として消費するようにしています。

訳あり品を販売する時に工夫していることは?

石野水産)消費者の期待とずれないことが大事だと思います。例えば「ちりめん山椒を作りたかったのに(訳あり品を購入したら)いつもと違う」となってしまうと困りますよね。ですから「お試し」ということでおまけでつけるようにします。また、訳あり品を販売することで、商品理解が深まるという副次効果もあります。例えば同じ海産物の「ひじき」ですが「ひじきにはもともと異物が混入しているんだ。取り除かれているのは普通じゃないんだ」といった声が届いたこともあります。

安曇野ファミリー農産)規格の観点ではロスになってしまう場合でも、消費者からしたら需要があるような場合もありますね。りんごはサイズが大きい方が市場価格は高いです。従って、出荷する生産者のほとんどが大玉を作ろうとします。ですが、一人暮らしなどで小さいりんごが欲しいという方も実はいらっしゃいます。こうした消費者理解の解像度が生産側で上がりにくいことは課題かもしれませんね。

F.F.HIRAIDE)消費者の要望に応えて結果的にロスが減るという取り組みは前からあって、サステナビリティの観点で後から言葉がついてきたとも言えると思います。例えば売れ残りの花について「ロスフラワー」という言葉ができて価値が再発見されたケースもあります。理由があって売れ残ることもありますが、こうした新たなパッケージが出てくるのも面白いですよね。

ふぁーむbuffo)食べチョクの商品にも異なるサイズのタマゴをパックにすることもありますが、意外とそれが好評です。例えば子どもが食べたり、卵かけご飯で小さな茶碗だったりすると、小さいサイズのタマゴの方が良いんですよね。異なるサイズでも同じ値段なので、そこをしっかり説明しないとと考えていましたが、その点でむしろ喜んでいただけたりするのです。

薄羽養鶏場)話を聞いていると、同じ「ロス」という言葉を使っていても、みているものが違いそうですね。形が規格と違うから捨ててしまうという話もありますし、加工品に使えるものもありますし、あるいは豊作で市場に出荷しても値段がつかないようなものもあります。幅広い意味の言葉だからこそ、ロスの削減を考える上では最初に「何をロスと捉えるか」を設定しないとなと感じました。

生産者と消費者が繋がることで実現できる、食品ロス削減のアイディアはありますか?

石野水産)まずは、生産者同士で繋がりたいです。例えば同じ広島県で、ふぁーむbuffoさんの飼料にうちのちりめんを使ってもらえれば、それは食品のバトンみたいなものですよね。こうして繋がったうちの海産物とふぁーむbuffoさんのタマゴをセットで食べチョクで販売できたら面白くないですか?

薄羽養鶏場)それを地域でまわしていくという活用が現実的なのかと思います。距離があると輸送が発生しますが、そのコストまでは持てないということはよくあります。例えば、私のところでは食品残さやC品を分解する機械があって、それで堆肥が作れます。動物性タンパク質を含む堆肥になるので、使い勝手が良ければそれを例えば平出さんの花に使っていただくといったことはありかなと。

ふぁーむbuffo)食べチョクの生産者はほとんどの県にいらっしゃいますよね。ですから、都道府県ごとにそういった生産者同士が繋がれる仕組みがあると良いんじゃないかと。自分のところに「こういうロスがある」という情報を発信して、それをみた地域の生産者が「私それを使えるかも」といった形で応えていく。そうして繋がりが生まれたら、それをお客さんに情報発信することで「つながり」に魅力を感じて買ってくださる方もいるのではないかなと思います。

F.F.HIRAIDE)結局やっぱりコミュニケーションなのかなと思うんですよね。無理くり商品づくりをするというよりも「こういうものですよ」という点を丁寧に説明する。その価値をわかってくれる消費者がいるという点が食べチョクの良いところだと思うんですよね。普通の売り場だと「分からないけど、ただの不揃い」で終わってしまうような商品でも、それを価値として見てくれるわけです。

安曇野ファミリー農産)あえて同業者以外とつながるということも良いかもしれないですね。例えばりんご単品のロスを無くすためにシードルを作ろうといった取り組みをしても、原材料で味の差別化をするのはなかなか難しい。全然違う分野の生産者が集まって企画するからこそ面白いものが生まれるのではないかと思うのです。企画した商品が食べ物になるかもしれないし、肥料にだってなり得ますからね。

つながることで生まれる価値

生産者さんの対談、いかがでしたか?どの方も日頃、消費者との繋がりを大切にして、たくさんのコミュニケーションを取られています。そんな方々から、今度は生産者同士の地域のつながりを創ることで、もっと面白い商品が生まれ、価値が生み出せるのではないかというアイディアをいただきました。

食べチョクはこのような取り組みを今後とも全力でサポートし、まだ見ぬ価値が一次産業や地域から生まれる、まさしく「未来につなげる」取り組みができるように、邁進してまいります。

9回にわたる「食べチョクアワード2024」特集ですが、本記事が最終回です。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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