岡山県 新見市
草月葡萄園(くさつきぶどうえん)
市場ではブドウの評価はほとんど見た目で決まりますが,実際に食べる消費者が求めていることとはズレがあるような気がします.当園は,岡山県北西部の高原地帯にひろがる石灰岩台地という恵まれた環境の中で,見た目にはこだわらず食べて美味しいブドウをつくることばかり考えています.
生産者のこだわり
適地適作(1) 土壌
当園は新見阿哲カルストと呼ばれる石灰岩台地にあり,石灰岩の上にそれが風化した赤い粘土(テラ・ロッサ)の堆積した土壌です.石灰は土壌の酸性化を防ぐ代表的な肥料ですが,ブドウは中性~弱アルカリ性を好むため,このような土壌はブドウ栽培に理想的です.また,カルシウムは植物にとっても必須の栄養素で,細胞壁の材料となります.石灰岩の主成分は炭酸カルシウムですから,ここでは植物が丈夫に育ちます.日本は火山国のため火山灰由来の酸性土壌がほとんどで,石灰粘土質土壌は少ないのです.
適地適作(2) 気象
ブドウは色づき始める頃から収穫までの間,糖分を蓄えます.ブドウが美味しくなるためには,その期間①日照が多く雨が少ない,②夜温が低い,ことが必要です.(日照が多ければ光合成される養分が多くなりますし,雨が多ければ水っぽくなります.夜は光合成できませんが,夜温が高いと代謝が活発になって昼間蓄えた養分を消耗してしまいます.)中国山地・四国山地・広島東部の高原地帯が雨雲をブロックしてくれるため岡山県は晴天が多く,当園は南東向き斜面にあるテラス状の畑で日照を遮るものがありません.また,内陸の高原地帯のため,夜は日中よりだいたい10~15℃以上下がります.

収量の抑制
ブドウを美味しくするためには,実をたくさんならせてはいけません.葉や根の能力が同じなら,実の量が少ない方がブドウ一粒に分配される養分は多くなります.そんな理屈は農家なら誰でもわかりきっていることですが,実際にはできません.市場出荷の場合,ブドウの末端小売価格のうち農家の取り分は3割~せいぜい4割ですから,できるだけたくさんならせないと利益が出ないのです.当園は,販路を直売に特化することで省いた流通費用を,収量の抑制により味を良くする,という形で消費者に還元しています.