

新潟県 佐渡市
いつくの郷
笈川 知隆
新潟県佐渡市。離島として最大の面積を誇る佐渡に縁もゆかりもなくアイターンしたのは2010年でした。移住生活にも慣れ、自然栽培の農家として独立したのは2014年です。
農園名は“いつくの郷”としました。
いつくとは、漢字で “斎”と書き「神様に対するように大切にお世話をし育てる・奉る」という意味です。作物を作り出すための多様な八百万の神様(微生物、虫など様々な命)に感謝する気持ちをいつまでも持ち続けたい事から、いつくの郷と命名しました。
木村秋則さんの提唱する自然栽培を感銘し実践し、安心な作物の提供、また環境に負荷の無い農業を目指しています。
生産者のこだわり

安心第一な食べ物を提供したい
肥料農薬は今までのの食料供給を支える現代農業には必要な物であったと思います。
ですが、それは安心安全と呼ばれている物なのでしょうか?
安心安全な食べ物を勉強しているうちに農作物の形の大きい物・綺麗な物の実態を知りました。
また木村秋則さんのお米の腐敗実験によると慣行栽培、また未熟堆肥を入れた有機栽培は、コップの中に水と一緒に入れてしばらくおくと異臭を放ち腐っていきます。同じやり方で自然栽培の作物は、お酒作りと同じく芳香を放ち発酵してくるのです。
肥料と農薬が蓄積された腐った異臭を放つ作物は健康な体をつくるのでしょうか。
また魔法の様な肥料農薬を現代はあまりにも使い過ぎた結果、土壌汚染などにより環境のバランスが崩れてきています。地球温暖化の最大の原因は肥料の使い過ぎという衝撃的な結論をアメリカ海洋大気庁が発表しています。
これは安心安全なことなのでしょうか?
肥料農薬を使わなくても自然栽培という技術で作物が出来る事を木村さんは教えてくれました。難しい技術ではありますが、これからの農業のあり方は、肥料農薬を使わずに作物が出来るならそうすべきではと考えます。
収量は不安定ですが、安心第一な物を提供するために。

無肥料無農薬の木村秋則式自然栽培で作物の生命力を引き出す
いつくの郷では全面積を木村秋則式の自然栽培で行っています。
同じ自然栽培でも苗がしっかりしてないと田んぼや畑に移植した際に草に負けてしまうので、苗を育てる土には肥料を入れて移植してからは肥料は入れないという自然栽培のやり方を聞く時があるのですが、いつくの郷では苗を育てる土から無肥料土を使って最初から厳しい環境で育ってもらっています。
僕らは声を掛けて、彼らをそっと応援します。
木村さんがリンゴの木に声を掛けていたように。
彼らは生きる為に必要な栄養分を得ようと、地中深くまで根をしっかり伸ばします。でも応援すると、伸ばしてくれます。生きる為に、彼らは一生懸命になってくれます。
僕らはただ彼らが生きやすい環境(草が邪魔なら除草したりするなど)になるようにお手伝いするだけ。主役は人でなく作物だからです。

昔ながらの天日干しで太陽のエネルギーを凝縮!
今は機械乾燥が当たり前の時代で凄く便利になりました。
ですがいつくの郷では、今ではほとんど見かけなくなりましたが、昔ながらの田んぼ風景を生み出す天日干し、稲作で言うならば“はざ掛け”を行っています。時間も労力も掛かりますし、雨に濡れたり、台風に掛けている台をなぎ倒されたりもします。
繰り返しますがその時の気象条件により時間も労力も掛かりますが、太陽のエネルギーを目一杯吸収してもらえるよう天日干し乾燥を行っています。布団乾燥機で干したお布団よりもお日様に当てたお布団の方が断然気持ち良いですよね。だから刈られた稲達も機械で乾燥されるよりも天日の方が気持ち良いに決まっています。さらに干している間に追熟もされるので天日干しの作物は美味しいのです。
毎年大変ですが、こだわりの一つです。

自家採種を続け環境に適する種を育てる
無肥料で行う際、種が環境に適応していなければ草や虫には勝てないのです。
作物は馬鹿ではなく毎年学習します。その土地の風土、虫などを勉強して実を付けて、次の世代ではそれらに負けない様にと遺伝子を継いでいきます。雑草と呼ばれる草達の強さをみればその意味がご理解頂けるかと思います。
少し前まではどの農家さんでもやっていた事ですが、世の中が便利になって種はお金を出して買う(俗にいうF1種など)時代になってきたことから自家採種という仕事をされなくなり、在来種と呼ばれる地域で継がれていた固有種が廃れていく事になりました。
いつくの郷では種を自家採種して環境に適応した種を継ぐという、昔ながらの方法を実践しています。
毎年毎年新たなる課題が出てくる難しい自然栽培においてまだまだ勉強と経験不足なので収量は多くないですが、確実な安心な物を佐渡の風とともにお届け致します。