
お客様と生産者仲間に愛される 山梨の桃農家「南アルプスこまの園」さん こだわりの”樹上完熟桃”とは <生産者訪問インタビュー #001>
標高が高く、ひんやりと涼しい、7月上旬の山梨県 南アルプス市。
さくらんぼ、桃、すもも、ぶどう、干し柿を生産されている、「南アルプスこまの園」の野田さんを、食べチョクスタッフが訪ね、桃へのこだわりについて農園でお話をうかがいました。
野田さんは、ご両親から桃の栽培を引き継がれ、20種類以上の品種を少量ずつ栽培されている桃農家さん。食べチョクには、贈答用にもぴったりな、大きくて美味しい大玉の桃を出品されています。リピーターのお客様だけで即日完売してしまう品種もある、食べチョクでも人気の生産者さんです。
こだわり1|美しい色づきと味のために、手をかけ技を磨く
南アルプスの山々を望む ひらけた平らな土地に、野田さんの畑は点在しています。畑には、広く間隔をあけて植えられた桃の木が気持ちよさそうに枝を伸ばし、青々とした葉っぱの影からは、可愛らしい赤い実が顔をのぞかせていました。
ーーー大きくてずっしりとした、綺麗な桃ですね!
色づきとそこからくる味は、僕の桃栽培のこだわりですね。これは白鳳という品種です。
桃は とにかく手ががかかるんですよ。僕は全ての桃に袋をかけて、肌をきれいに仕上げているんです。桃の木の株元に、地表面を覆うマットを敷いて、地表の乾燥や温度変化の調節もしています。
大変な作業なので、年々桃の生産者の中でも、袋がけや敷き物をやらない生産者が出てきたり、桃ではない別の果物に転向する人が出てきたりしています。
ーーー「浅間白桃」を今年も食べたいお客様が食べチョクにいらっしゃり、探しているのですがありますか?
浅間白桃は、袋がけが必要な品種なんです。真っ暗な中で成長し、赤く色づいていきます。裏を返せば、除袋のタイミングを間違うと赤くなりにくい。栽培が難しいんですよね。手間がかかることを理由に、生産する農家が減り、流通にも乗らなくなってきました。僕は食べチョクに出品しましたが、すぐに完売してしまいました。
ーーー手間と技術が必要な品種は、希少性が高まり「今年も食べたいけれど見つからない」という状況になっていくんですね。
こだわり2|自然の栄養をたっぷり浴びて完熟した瞬間に収穫する【樹上完熟】
ーーー果実の重さで、枝がたわみそうですね。こんなに美味しそうな桃がたわわに枝に実っている光景を初めて見ました。収穫はいつですか?
この桃はもうすぐですね。僕は収穫時期を遅らせて「樹上完熟」させることを目指しています。桃の栽培を引き継いだ両親からの教えに「収穫のタイミングは引っ張るほど美味しい」というのがあり、僕もそれを信じています。
毎日深夜2時台に、ヘッドライトをつけて畑に向かって作業をしているのですが、朝4時くらいからかな、空が白み始めるんです。自然光で桃をひとつひとつ見極めて、「今だ!できたぞ!」というタイミングに収穫して、その日のうちに発送しています。
ーーー手間をかけてきた収穫間近の桃が、完熟を待つ間に天候被害に遭ったらと思うと、気が抜けませんね。そこまでして美味しい桃を届けたい理由は?
あるお客様から「"リスクの高い収穫" だと分かっているので、高いとは思いませんよ」という言葉をいただいたことがありました。嬉しかったですね。僕のこだわりを分かってくださる方に、伝わっていけばいいなと思って、毎日桃に向き合っています。
こだわり3|自分が見渡せる範囲で育て、丁寧に届ける
ーーー広い農園に手間のかかる品種も多く栽培されていらっしゃるとのこと、どのように人手を集めていますか?
僕はすべてを自分ひとりでやっているんです。これからの夏の収穫時期は本当に忙しくなりますが、自分がこだわってやっていることを、誰かにお願いしたことによって崩されるのが嫌なんです。これぐらいでいいや、と妥協することが嫌で。自分にドSなんですよね(笑)
大変は大変なんですが、食べチョクを通じて仲良くなった生産者さん同士、オンラインでおしゃべりしながら農作業をすることもあるんですよ。ファーマーズマーケットへの出店を手伝ってくれたり、イベントに声をかけてくれたり、お互いの生産地に遊びに行ったりと、仲良くさせてもらっています。
ーーーお客様からのメッセージも読まれているんですか?
そうですね、色々なご感想をいただけてありがたいです。何度も購入いただいているお客様は、あのお客様だなと思いながら梱包しています。お互いに、ほら、気持ちよく買っていただけたらいいな、と思ってやっています。
ーーーこちらの畑の桃は、別の品種ですか?
こっちの畑にあるのは、山梨の桃。山梨の桃は「夢」がつくんです。やわらかくてジューシーな「夢みずき」と、食感がありながらもサクとろな「夢桃香」。ぜひ食べてみてください。
ーーーずっしりと重いんですね。桃のいい香り!かぶりつくとジュワッと溢れる桃の果汁で、美味しすぎて幸せです…
最近は、桃の中が茶色くなっていたということでお問合せをいただくこともあります。「蜜症」というのですが、お日様が当たって糖度が高くなっているところ。バナナでいうと黒いシュガースポットのようなもので、桃が傷んで食べられなくなっている訳ではないんです。
ーーー太陽の光を浴びた証拠なんですね。うわ、めちゃくちゃ濃厚な甘さ!これは過去イチかもしれません! 食べチョクの事務局でも、お問合せをいただく際に、問題ないことをお伝えできるように工夫したいと思います。
<訪問後記> "樹上完熟桃"をいただけるのは、産地直送「食べチョク」ならでは
樹上で完熟させるリスクを取りながら、桃の美味しさを追求するという向き合い方をされている野田さん。1週間後にスーパーの店頭で熟れることを目指した早期収穫よりも、樹上でギリギリまで栄養を得た実を収穫して、すぐにお届けできるのは、産地直送ならではです。
お話をうかがう中で、もいでくださった桃を思わず頬張ってしまったスタッフを見て笑っていた野田さん。桃との対話だけでなく、お客様との対話も楽しみながら、丁寧に手をかけて、丁寧に売る、対等に向き合う真摯な姿勢が印象的でした。
「生産者のこだわりが正当に評価される」公平な場を目指して運営されている「食べチョク」。今後も、生産者さんのこだわりを、生産現場からお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。
野田さんの「南アルプスこまの園」
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