能登町の野菜農家「ハルサ」さんにとっての能登半島地震と支援の現実

2024/07/26 更新

日本中に衝撃が走った令和6年能登半島地震から、7ヶ月ー。

メディアでは目にすることが少なくなり、私たちは今能登がどのようになっているのか、想いを馳せることが難しい状況となっています。

本当の能登は、どうなっているのか。そして、私たちの支援はどのように繋がっているのかー。

「食べチョク」サクセス&オペレーションチームの伊藤が、5月末に実際に現地でボランティアをして目の当たりにした、現地の様子と支援を受けた生産者さんの思いを、レポートします。

(※本記事は、2024年5月末の訪問の様子を、2024年7月に再構成したものです。)

登録生産者「ハルサ」の坂本さんにとっての能登半島地震

今回の訪問は、珠洲市のお隣、能登町に畑を持つ食べチョク登録生産者さんである「ハルサ」さんに全面協力してもらい実現しました。ハルサさんは能登町でジャガイモなどの野菜を育てている生産者さんです。

今回最もお世話になったのは農場長の坂本さん。坂本さんは珠洲市で育ち、一度上京した後、珠洲市に戻ってきてからは青年会議所で理事長を務めるほど、人望がとても厚い方。

そんな坂本さんが暮らす珠洲市でおきた今回の震災。

関東でも大きな揺れが観測された本震が発生する4分前に、震度5強の地震が発生。坂本さんは、揺れの状況を確認するため、お家の隣の母屋に様子を見に行き、家に戻る途中に、本震である震度7の地震が発生。家の中からお子さんと奥様の声が聞こえ、急いで戻ろうとしたものの、その場から動けなくなるほどの揺れだったとか。


▲坂本さんの家の駐車場から撮影した土砂崩れの跡。黒い土嚢で崩れないように押し止められている家の前の土砂。

街の中心から近い坂本さんのご自宅でも、元旦から2ヶ月ほどは電気が戻らず、水道が戻ったのは訪問した前々日(2024年5月末)でした。もちろん珠洲市には、まだ水が戻らない地域も少なくないそうです。

思うように復興が進まない珠洲市の状況

ボランティアは時間の制約も強く、中心地にあるボランティアセンターと作業現場のピストンになってしまい、なかなか被災地の全貌を知ることができません。そんな中、坂本さんのご案内のもと、珠洲市の中でも特に被害の大きい地域に連れていってもらいました。

その被災地で目の当たりにしたのは、本当にこれが震災から5ヶ月経過した状況か…と息を呑むほどの被害の大きさと復興の難しさでした。

▲津波にあった海沿いの商業施設。まだ復興に手がつけられておらず室外機が窓枠に刺さっていた

▲通りに迫り出し斜めに傾きながら崩壊する家

▲お寺の雨除けが根本から折れて転がっている。どれほど揺れたらここまでのことになるのか、と目を疑う

復興が進まない中でそれでも「復興」と向き合う覚悟

外から"頑張れ"と声をかけてもらうがまだまだそんな気持ちにはなれない。

被災地回りをする前日、坂本さんがこんな言葉を漏らしました。

その時、外部から訪問させていただいた自分には、曖昧に笑ってその場を過ごすことくらいしかできませんでしたが、実際に被害が激しい地域を目の当たりにすると、その意味の捉え方も違ってきます。

能登半島は、過去2022年6月、2023年5月にも震度6クラスの地震に見舞われたそうです。木造の家屋はその度に被害を受けてきましたが、それでも毎度復興し、元の生活に戻ってきています。

そんな中発生したのが、今回の能登半島地震。復興してきた街並みは再び崩壊、避難や外へ移住する人が増加…。感覚として過疎化が四半世紀分は進んだとも言われています。今回はボランティアも明らかに足りず、復興が思うように進んでいないという現実もあります。

そこで暮らし続ける限り、嫌でもそんな被害を受けた思い出の街を、毎日目の当たりにし続けなければならない…。もし自分がそんな状況に置かれたと考えると、それでも元気にやっていこうと思えるだろうか…。

坂本さんはこうも語っていました。「だから農業はいいんですよ。季節が来るとその作業をしないといけない。やらなければいけないことが出てくるから。だから他のことを考えずにすむんです。今年一年は厳しい現実から目を背けてでも、なんとか(日々の生活を)回すことに集中することにしてるんです。

確かにそうでもしないと、復興よりも先に心身が擦り果ててしまう現実がここにはあるんだろうと感じました。

応援チケット資金で継続できたジャガイモの栽培

坂本さんの案内でハルサさんの畑にも連れて行ってもらいました。

畑は珠洲市から20分ほど車を走らせた能登町内にあります。かぼちゃやジャガイモをメインに栽培しており、幸い地盤の崩れなどはなく、水・電気が止まるくらいの被害で済んだといいます。

それでも作付けは例年から20日遅れに…。春にはジャガイモ、かぼちゃの作付けを済ませており、畑は震災を感じさせない青々とした綺麗な姿でした。

▲広大なジャガイモ畑をバックに坂本さんと私(伊藤)

食べチョクで販売した応援チケットの寄付金の一部は、このジャガイモの種芋を購入するのに使われたそうです。また、購入した種芋は、地域で農業を続けていきたいと考える方にもなんと無償でお配りしたとか。

ハルサさんの地域愛と男気に圧倒されると共に、食べチョクのお客様からの応援が確かに届いていたこと、そしてそれがハルサさんだけでなく地域の方をも元気づけることに繋がっていたことが、とても嬉しく感じました。そんな多くの方の思いを紡いだジャガイモは、無事7月に収穫されました!

▲応援チケットの寄付の一部を使って地域に寄贈される種芋。 (ハルサさん提供画像)

また坂本さんがお家に水が戻るまで生活していた事務所前の駐車場は、地震の影響で水道管が剥き出しになっていたそうですが、ここも応援チケットにより、購入できた砂利で埋めることで使える状態まで戻せたとのことでした。

▲応援チケットで購入された砂利で整備されたハルサさんの事務所前の駐車場。

▲事務所と坂本さん。収穫されたジャガイモはこの事務所の中に集められ、ここから発送されます。

これからの食べチョクの生産者非常事態サポート室のあり方

地震だけでなく台風や大雨にも見舞われる日本。

一次産業はどうしても性質上、災害の被害に遭いやすい。今年も食べチョクでは高温障害で山形のさくらんぼ農家さんが大変だった状況などをお伝えしています。

そんな予想もしなかった災害が起きた時に、食べチョクとして少しでも生産者さんに寄り添えるサービスでありたい。そして「その時」の支援にとどまらず、継続的に被災した生産者さんにスポットライトを当て、地域の復興や生産者さんの復活まで見届け、それを支援してくれるお客様にしっかり届けるところまでやり切れるチームを実現したい。

食べチョクは災害を防ぐことはできませんが、お客様と生産者さんを結びつけ、支援の輪を広げていくことならできるのかもしれない。そしてその支援が生産者さんの「生業を続ける選択」に繋がっていくのであれば、これ以上の喜びはありません。だからこそ、しっかりと一次産業の生産者さんに寄り添いサービス提供できる、私たちなりの「災害支援」をこれからも探っていきます

【ご紹介】食べチョクで行っている災害支援

食べチョクでは、以下の応援商品を販売しています。

・被災された生産者さんに寄付ができる応援チケット(500円/5,000円)
・商品を購入することで1注文あたり300円生産者さんに寄付を行える寄付商品

生産者さんたちの復興はまだまだこれからです。もしよろしければ応援いただけると嬉しいです。

応援チケット・寄付商品はこちら>

今回、もともとの記事を再編集したレポートとなりましたが、今回記載していない部分も含め、全文はnoteで公開中です。

もしご興味を持っていただいた方は、ぜひこちらもご覧ください。

レポート全文はこちら>

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