

秋田県 山本郡三種町
はたけやま椎茸園
椎茸には「旬」というものがあります。原木椎茸の場合は春と秋が原則です。
ところがその旬の椎茸はあまり市場には出回りません。一挙に自然発生しますから、大方は乾椎茸となってしまいます。旬の生椎茸のおいしさは、菌床椎茸や短期原木栽培でのおいしさとは全く違います。別の品物だという人もいます。
当園では、その旬のおいしさを心がけて、椎茸を栽培しています。
生産者のこだわり
農薬や肥料など化学物質を使用しない
原木椎茸は本来、農薬や肥料など化学物質は使う必要はなく、自然のままで栽培できる唯一といってよい「野菜」です。しかし、近年では原木椎茸にもさまざまな栽培方法が考案され、その方法によってはホダ木の消毒などに化学物質を使う場合が出てきております。菌床椎茸の場合は「ホダ木」作製段階から消毒などに化学物質が使用され、また、「栄養剤」と称して添加物が使用されています。
ですから、椎茸が大好物であるナメクジが私のホダ場では大きな顔をして徘徊しています。気持ち悪いという人もいますが、これが生態系なのです。
卸売市場を経由しての販売だと、生産者が販売店を決めることができません。当然、生産者に価格の決定権もありません。販売店によっては、菌床椎茸と全く同じ売り方をするところがあり、当然単価にも差が出ません。それは当園の本意ではありません。菌床椎茸と同じ価値をもつならやむをえませんが、その価値に見合った価格設定をしてもらわないと原木椎茸自体が存続できません。
何故、原木椎茸を始めたか?
2009年地元の農協を54歳で中途退職して、父親たちが築てきた原木椎茸を再興しました。現在、市場流通では90%以上が菌床椎茸です。しかし、菌床椎茸では本当の椎茸のおいしさを消費者には届けられません。食べてもらえればその差ははっきりします。旬の原木椎茸の味は「陸のアワビ」といわれ、絶品です。
椎茸の本当の味を味わってほしいのです。
◎ 昭和34年からのシイタケ栽培
我が家の原木椎茸栽培は昭和34年から始まりました。当時は高度成長が始まった頃で、この地区は出稼ぎも盛んで県内でもっとも出稼ぎ率が高い地域といわれていました。
父は隣近所が出稼ぎに行くのに抵抗(?)して冬でも稼げる農業をしようと仲間の二人と三人で原木椎茸を始めました。
最初はホダ場の環境を作ることができず、雑菌によって全滅という状況も少なくはなかったようでした。しかしながら、我が家の松林がホダ場として最高だということを発見して、椎茸生産が軌道に乗った経緯があります。ホダ場の環境を競う秋田県主催の「ホダ場コンクール」でも数回最優秀賞を獲得しています。そのせいか当地区で最高で24戸が椎茸組合を組織した経過があります。
新たなビジネスモデル?
原木の生椎茸は秋田県内ではほとんど市場には出回っていません。何故なんでしょうか?
卸売市場の担当者にも何回か足を運びましたが、結局は、菌床椎茸と同じような売られ方をされてしまいます。市場流通では菌床椎茸との「差別化」は品質面でも価格面でもできていません。それでは原木生椎茸を作っている意味がありません。原木の生椎茸は道の駅等の直売所でチョボチョボ売られているだけです。
それに、旬の原木椎茸は、その品種によっても違いますが、春と秋に一斉に発生します。そうすると生で販売するのは容易なことではありません。そこで、原木椎茸の生産者は「乾椎茸」に加工してしまい、生での流通は無くなってしまうのです。確かに「乾椎茸」でもおいしいのですが、旬の生椎茸の味は格別です。
そんな状況の中で、私は新たなビジネスモデル(?)として、市場流通させないで旬の生椎茸の販売を実現したいと思っています。実際にやってみて、日持ちしない生椎茸を定時、定量の原則で生産、出荷するのは非常に難しいことがわかりました。しかし、それに挑戦するのが、私の生きがいでもあります。