梨農家さんへ聞いた!<梨からみる地球> 猛暑やゲリラ豪雨などの気候変動で梨がピンチ!?シャキシャキ食感を守ろう!
食べチョクでは、2024年8月に、梨の農家さんに、『梨の栽培に関するアンケート』を実施しました。九州から山形まで、全国16軒の農家さんにご協力いただいています。
「猛暑や台風などの気候による影響がある」 と答えた農家さんは約60%。
半数以上の農家さんが、梨の栽培を通じて気候変動や地球環境の変化を感じているという結果になりました。
また半数以上の農家さんが「環境変化の影響を受け、対策を講じている」という結果ともなりました。どうしても避けられない台風などにも頭を悩ませているようです。
猛暑の影響はさまざま。激しい気候は秋の味覚「梨」を変えてしまう?
年々暑さが厳しくなっています。今年の夏もニュースなどで連日高温情報を伝えていたことは、記憶に新しいのではないでしょうか。
猛暑が与える影響というと「水不足」や「日照り」が真っ先にあげられるかもしれません。
しかし、猛暑の影響はそれだけではないのです。豪雨や雹(ひょう)によって梨に傷ができたり、浸水被害なども引き起こします。
さらに雨不足により灌水(かんすい…作物に水を与えること)に人手がかかってしまうという影響もあるのです。
日々自然を相手にしている梨農家さん。近年続く猛暑による影響は、私たちが考えるよりずっと多く感じているようでした。
この夏は暑さによって体調を崩してしまったという回答も ありました。
梨のシーズンは台風のシーズン!?収穫時期と重なってヒヤヒヤ
秋に旬を迎える梨の収穫時期とぶつかってしまうのが台風です。
ちょうど梨のシーズンと台風のシーズンがぶつかってしまうことが多くあるのだそう。
台風の影響は対策をしてもなかなか防ぎきれないこともあり、毎年ヒヤヒヤしながら収穫しているという声が聞かれました。
台風による強い雨風はどんな被害を梨にもたらすのでしょうか。
まずは強い風や雨によって梨が落ちてしまう「落果」です。
収穫を間近に控えた実が落ちてしまう…。大切に栽培してきた農家さんにとって、とても悔しいことというのは想像に難くありません。熟した梨は特に落果の被害にあいやすいそうです。
またちょっと驚いてしまうのが「カメムシ」の被害です。台風によってカメムシが飛来して梨の実につき、汁を吸ってしまうのだそうです。
これから出荷してシーズンを迎えるという時に台風がやってくる、というのは多くの梨農家さんにとって頭を悩ませる問題のようでした。
暑さで梨が柔らかくなる?高温によるさらなる影響とは
「暑さが直接の影響かは不明だが、木になったまま梨の実が柔くなってしまった」という回答がありました。もちろん強い日差しによる「日焼け」も起きているようです。
高温多湿の環境下では、実が柔らかくなってしまうこともよくあります。
梨の大きな魅力である「シャリッ」「シャキッ」とした食感に影響してしまうため、高温が続くことは困りものなのですね。
近年どんどん気温が上がっているために対策のしようがない…という農家さんの声も聞かれました。
また夜間も暑く、熱帯夜となり気温が下がらないため、その対策も必要となっています。
暑さそのものの影響にプラスして、対策のための手間やコストが余計にかかってしまうのですね。
さらに高温はダニの発生や、カメムシの被害なども引き起こす場合があります。
防風ネットや扇風ファン…。さまざまな対策をする梨農家さん
美味しい梨をお客様へ届けるために、7割以上の農家さんが何らかの対策を講じているというアンケート結果でした。
自動で灌水(かんすい)する装置の検討や、夜間も下がらない気温のための扇風ファンの設置などコストがかかりながらもさまざまに検討されている様子がわかりました。また台風対策として防風ネットを使用しているという声も聞かれました。
美味しく熟した梨を守るための対策は、多くの農家さんの課題となっています。
自然相手の農業。全方位には対策しきれないことも
大きな台風などは防風ネットだけでは防ぎきれないことも。
自然災害が突如として起こった場合、すぐに対応できない場合もあります。
耕作放棄地からの虫の被害が出てしまったという声も聞かれました。
また農家を廃業したことによってその土地が住宅造成地となり、土からコンクリートに変わった影響で浸水被害が出るようになったという回答もありました。
水が染み込まない土地に変わったことで、水が流れてきてしまうのですね。
気候だけではなく周囲の環境の変化による避けられない影響も出ていることがみえてきました。
極端な気候に振り回される…多岐にわたる梨農家さんの訴え
暑さは梨に影響するばかりではありません。
暑さによって体調を崩してしまった。という回答もありました。
屋外での作業には慣れているはずの梨農家さんでも、近年の暑さには戸惑っている様子が伝わってきます。
さらに「この暑さでは高齢の両親との作業が厳しいため、栽培方法や雇用方法を見直す必要が出ている」という回答も。
雨が多くても少なくても影響が出てしまうため、極端な気候による悩みは多くなっています。
また気候に関することだけではなく「近年生産資材費・運賃が大幅に値上がりしているのに、青果市場へ出荷しても売上価格が以前とさほど変わらず利益が減っている」という声などもありました。
梨農家さんの悩みは多岐にわたっているという現状もあります。
梨を楽しむ期間が短くなる!?まぼろしの品種になりかねない「新高梨」
梨の名産地・千葉県市川市では新高梨の多くが廃棄になってしまうという事態が起きていました。
新高梨は比較的暑さに弱いと言われる品種であるため、実が柔らかくなってしまったとのことです。
大きな被害や影響が出れば、販売数が少なくなるのは避けられないため、新高梨の生産を危ぶむ声も。
新高梨に限らずこのままの気候が続けば、梨が出回る時期はどんどん短くなってしまうことも起きかねません。
しかし、多くの農家さんでは暑さに強いとされる「幸水」なども栽培しており、さまざまな品種を長く楽しめるように工夫されています。
独特の食感と爽やかな美味しさを味わえる梨を今一度じっくり味わっておきたい、そんな気持ちになりませんか?
シャキッ・ジュワッの食感を守る!和梨好きを唸らせる農家さんの努力
果実が柔らかくなってしまっては、梨の最大の魅力と言っても過言ではない「食感」が失われます。
さわやかに甘く、清涼感たっぷりの秋のおいしさを守る努力を、多くの梨農家さんがしています。梨は追熟せず、また水分が多いので早くいたんでしまいやすいのです。
多くの梨農家さんでは、届いたらなるべく早く食べることをおすすめしています。
クール便に切り替えたり、梨をより美味しく食べてもらえるよう食べ方などを記載したリーフレットを同封している農家さんも。
SNSを使って梨の注目度アップに努めている農家さんの声も聞かれました。
自宅で楽しむのはもちろん、贈り物にもピッタリな梨
秋の味覚の代表選手とも言える梨を贈答品に選ぶ方がさらに増えているようです。
若い世代向けにパッケージや包装を工夫している農家さんもあり、より広い世代からの支持を獲得しているという回答がありました。
「ふるさとからの味」として贈り、喜ばれている方も多いそう。
梨への注目度はこれまでと変わらず、また農家さんの努力によってさらにアップしていきそうです。
多くの人に好まれ愛される梨。秋だけのシャキ・シャリッと、ジュワッと美味しい梨の素晴らしさを思う存分噛みしめたいものです。
最後に
多くの農作物と同様に、梨も気候によるさまざまな影響を受けていることがアンケートによってみえてきました。
同時に多くの農家さんが抱える問題も浮き彫りになりました。この問題は私たちが梨を楽しむ機会に影響してくる可能性もあるのではないでしょうか。
農家さんは日々自然を相手にしているため、私たちよりも気候の変動に敏感です。
そんな農家さんの声に耳を傾けてみませんか?
丹精込めて作られた梨の美味しさが、またひと味違ったものとなりそうです。
秋の味覚の代表選手「梨」。さわやかな甘さをぜひじっくりと楽しんでみてください。
食べチョクでは、今後も「農家からみた地球」について、シリーズでお伝えしていきたいと思います。
私たち食べチョクや農家さん、そして皆さんの食卓へとそれぞれが身近につながるきっかけにこの記事がなればうれしく思います。
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