イチヤマジュウさんの度重なる逆境と「ホタテ」の未来

2024/08/09 更新

陸奥湾でホタテと向き合って生きていく。逆境に負けず、ホタテ漁を守る3代目の意志。

今、日本のホタテ生産者は苦境に立たされています。

ひとつの要因は、近年の異常な海水温上昇により、ホタテの水揚げ量が年々減少していること。
もうひとつは、1年前に東京電力がALPS処理水の海洋放出を実施したことです。ALPS処理水を海洋放出したことにより、ホタテの輸出額51%を輸出していた中国が、商品の安全確保のためとして日本からの輸入をストップしました。

日本では、北海道・青森・岩手・宮城でのホタテの養殖が盛んです。
そのうちの8割は北海道で、次いで青森と南下していきます。

今回は、青森県の陸奥湾でホタテの養殖を行う「イチヤマジュウ塩越商店」の塩越さんにインタビューをしました。
3代目の塩越さんは、代々ホタテの養殖業をされており、近年の海水温上昇や処理水による影響について警鐘を鳴らしています。先代の想いを胸に、逆境に屈せず前を向く芯の強い塩越さんに、近年の海水温上昇による影響と、ALPS処理水放出に伴い起きた出来事をうかがいました。


イチヤマジュウさんが水揚げしたホタテたち

上がり続ける海水温度。生きられないホタテの赤ちゃんたち

ーー異常気象が続く中、海水温も上昇していると聞きますが、海水温上昇による影響は?

ホタテが生きていられる海水温を、超え始めている。

ホタテが生息できる海水温は24度まで。例年海水温は上昇していて、陸奥湾でも27度を超えるほどになってしまった。
北海道はまだ大丈夫だが、この海水温だと宮城県の三陸ではもうホタテの養殖は無謀な状況。

海水温の上昇により、ホタテの赤ちゃんがどんどん死んでいってしまう。
通常、ゴールデンウィークから7月中旬にかけて赤ちゃんホタテを捕まえて、耳吊りにして大きくさせる。そして、翌年の5月〜8月に出荷するが、最終的な水揚げ量は例年の4割程度になってしまっている。


△ホタテの赤ちゃん(稚貝)

耳吊り(*)で吊るしてた赤ちゃんホタテが全滅してしまうことも珍しくはない。
(耳吊り:ホタテの貝殻の端(耳)に小さな穴を開け、そこにロープを通して水中に吊るして養殖する方法)

赤ちゃんホタテが足りなく、その年の生産量が厳しくなってしまう生産者たちとホタテの赤ちゃんを分け合うことも。そうしないと、ホタテ漁を辞めてしまう人が出てしまう。

△耳吊りをしている海中のホタテ

漁業権は、やはり簡単には失いたくない人が多い。
漁師を辞めると、漁協に漁業権を返納することになり、再度その漁業権を取得し直すことは困難だと言われている。望んでいない引退を避けるためにも、協力できることはしていきたい。

海水温の上昇は、現時点で自然災害として認められていないため保険金も降りない。
生産量が減り、売り上げが減ることは死活問題である。

水温問題は、自然災害だと思っている。
どんどん上がっていく海水温に、私たちは立ち向かっていかなければならない。

△空と海がくっつきそうなくらいの綺麗な夏の陸奥湾。気温が上がるとともに、海水温も上昇している

ALPS処理水の海洋放出で受けたのは「二次被害」だった

2023年8月24日。東京電力が、ALPS処理水の海洋放出を実施しました。東京電力福島第一原子力発電所にある、トリチウム以外の放射性物質を安全基準を満たすまで浄化した水を海に放出して貯蔵しているタンクを減らす必要があったためです。安全性は担保されていたものの、そこで待っていたのは「中国輸完全停止」のニュースでした。

ーー処理水放出でどのような影響が?

陸奥湾のホタテは国内流通が主だったため、輸出先がなくなって売り先に困ることはなかった。直接的な被害はなかったが、いわゆる「二次被害」を受けた。

北海道のホタテが中国へ輸出ができなくなったことにより、日本国内に北海道産のホタテが留まるようになった。それによって、北海道のホタテの価格は下落し、同時に他産地のホタテの価格も下げざる得なくなった。

全国的にホタテの価格が下がってしまったことと同時に、北海道のホタテの消費量が戻らない限りは、このままホタテの価格は戻らないと思われる。国内生産の8割は、北海道。さらにホタテの輸出額のうち51%が中国輸出であったため、この分の売り先の確保はやはり困難である。

ーー大変ですね。ECサイト上でも影響はありましたか?

もちろん、ECサイトでの販売にも影響は大きかった。

大手ECサイトでは「ホタテ」を探しに来るお客様が多く、個々の生産者に目が行き届かないことが多い。
ブランド力が強く目立ちやすい「北海道のホタテ」は売れやすい上に、通常よりも安い価格で北海道のホタテが提供されてしまうと、消費者はそちらに手が伸びていくので、北海道ではない生産者は苦しい状況となる。

△身が引き締まったイチヤマジュウさんのプリプリホタテ

一方、食べチョクの場合は、生産者の顔が見えることで、ただ商品を購入するのではなく、生産者自身から商品を買うという感覚が生まれる。例えば「ホタテを買う」というよりも、「この生産者さんからホタテを買う」という体験ができるため、価格に関しても他と比較せずに設定することができると感じている。
応援してくださるお客様がいることで、生産者にとっても大きな励みになっている。「イチヤマジュウさんから買いたい」と思ってもらえることはとてもありがたい。

処理水問題で苦しんでいる北海道の生産者も、これからもしばらく厳しい状況が続くと思うし、日本全体のホタテ生産者も価格競争に直面しなければならない。店舗や現地での購入に限らず、ECサイトを通じてホタテを楽しむ消費者が増えることを願っている。


△イチヤマジュウ3代目の塩越さん

これからこの海とどう付き合っていくのか?

ーー海水温上昇問題や処理水問題によって、ホタテ養殖業を辞めてしまう人たちもいるのでしょうか?

海水温上昇による生育不良や、処理水問題による価格下落を受けて、周りにはホタテ漁を辞めてしまう人もいる。そのくらい、今の海の状況は過酷であることは確か。

陸奥湾に関しては、他の魚介類の養殖が難しい面もある。「海はみんなのもの」だから、簡単に他の養殖を始めることができず、新しい道を切り開くのは難しい。ホタテ漁はもちろんこの先も続けていきたいが、このままでは未来が見えにくい部分もあるため、別の形を模索する必要がある。

代々受け継いできたホタテ漁を守るためにも、変化を取り入れていくべきだと感じている。これからも、海と向き合って生きていく。

△(左)初代お祖父様 (中央)3代目塩越さん (右)2代目現社長お父様

インタビューを終えて 〜ホタテを食べて応援〜

処理水問題や、海水温上昇による稚貝の生育難。困難が積み重なる状況においても、屈せず代々継承してきたホタテ漁を守る塩越さん。

そんな力強い塩越さんが手塩にかけたホタテは、生で食べるとプリプリで、口の中にぱーっと旨みが広がります。冷凍ホタテも一つ一つがバラで冷凍されており、日用の使い勝手も考えられている丁寧さも感じられ、且つ美味しいと人気です。

この逆境は、生産者さんだけで乗り越えることは難しいと思っております。私たちにできることは「食べて応援すること」。

現在、食べチョクでは「#ホタテを食べて応援 プログラム」を実施中です。
2024年9月30日までのお届けの期間限定で【送料無料】にて、生産者さんがこだわって育てたホタテを楽しめます。

この夏、多くの日本の食卓にホタテが並び、日本のホタテを楽しむ方が増えますように。ホタテや冷凍ホタテがはじめての方も、この機会にぜひお楽しみください。

#ホタテを食べて応援 プログラムはこちら>

イチヤマジュウ塩越商店産の商品はこちら>


△陸奥湾の朝焼け。ここから美味しいホタテが生まれている

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