ぶどう農家さんに聞いた!<ぶどうからみた地球> 気候変動による影響を実感する生産者は100%。色の濃いぶどうは珍しくなる‥!?

2024/09/09 更新

食べチョクでは、2024年7月にぶどう農家さんを対象とした、ぶどうの栽培に関するアンケートを実施しました。中国地方の島根県から中部地方の山梨県まで、全国33軒の農家さんにご協力いただきました。

「気候変動や環境変化を感じる」と答えた農家さんは100%という結果に。温暖化の影響により、ぶどうの栽培で対策したことや変えたことがあると回答したぶどう農家さんは33軒中31軒と、さまざまな対策を講じられていることがわかりました。

気候変動は、一体ぶどうの栽培にどのような影響を与えているのか、深掘りしていきます。

日差しや気温上昇…「暑さ」がぶどうに与える影響

日差し

夏から秋にかけて、季節の贈答品としても人気の果物「ぶどう」。大切な人にプレゼントする際には、味わいはもちろんのこと、綺麗な見た目も大切ですよね。粒が大きくて、艶やかで色鮮やかなぶどうを探す方も多いのではないでしょうか。

今回のアンケートでは、ぶどう栽培で重要な「色づき」が、温暖化によって難しくなってきていることが明らかになりました。特に影響を受けているのが黒系ぶどう。温暖化により昼夜の温度差が減ったことが、生産者さんを悩ませています。

他にも、夏の日中の暑さで、ぶどうの樹や房の日焼けや枯れに繋がったり、働き手の熱中症のリスクが上がったりと、生産性の低下などへの悩みも多く聞かれました。

豪雨や気温差…「気候の揺れ幅」がぶどうに与える影響

降雨量の不安定さや雹なども、ぶどう栽培に大きな影響があります。局所的な豪雨により、ぶどうの粒が割れてしまう地域がある一方で、雨不足でぶどうの粒が小さくなってしまうことも。不安定な降水量で、ぶどうの樹にストレスがかかっており、生育全体への影響が懸念されています。

また、初春の雹被害や霜害が増加した地域がある一方、積雪減少により、春の水不足が起きている畑もあり、「気候の揺れ幅=品質の揺れ幅」につながっています。

害獣被害も…「害獣・害虫」がぶどうに与える影響

地球温暖化による自然界の生態系変化が、ぶどうの栽培にも影響を与えていることも分かりました。ひとつは害獣被害です。野生動物の餌となる野生の木の実や果実が減少していることで、生産者さんが手間ひまかけて栽培した作物が食べられてしまう食害が増加しているとのこと。特にアライグマは、糖度の高い農作物を好むため、ぶどうへの被害が多く出ています。アンケートでも3軒の生産者さんから回答がありました。

また害虫カメムシによって、ぶどうに傷ができてしまったり、毛虫による落葉などの害虫が増えたと感じる生産者さんも多く、早急な対応が必要な状況です。

日除けや品種変更、栽培方法、設備導入…試行錯誤を重ねる生産者さんたち

袋付き

気候変動による栽培環境の様々な変化に対し、94%の生産者さんが何かしらの対策を講じていると回答しました。夏の暑さを凌ぐために、袋掛けや傘掛けのタイミングを早めるなど、生育時期が早まることを想定した工夫を、先回りして実行しています。

収穫量を減らしてぶどうの樹の負担を減らしたり、標高が高くより冷涼な地域で栽培するなど、ぶどうの樹が実をつけやすい環境に整えるようにする生産者さんも。またそもそもの栽培品種自体を、暑さや雨に強い品種や、着色の良い品種に変更するなど、様々な方法が試されていることがわかりました。

手間ひまかけたぶどうを、多くの人に届けるために

試行錯誤の上、無事に実ったぶどうをどのように消費者に届けていくか。
鮮度が高い状態で届けられるネット販売に力を入れたり、良い商品を多くの人に届けるために少量販売の比重を増やしたという声もありました。

他には、加工業者と連携して、房のままでは販売できないぶどうを加工にまわして無駄なく活用する方法や、ぶどうの収穫体験自体を商品にしたり、パッケージやロゴなど消費者のぶどう栽培への理解を深めることに注力し、付加価値を高めていく工夫をされている方もいます。

一方、自然相手に難しさを嘆く声も。

さまざまな対策を講じる生産者さんがいる一方で、被害を防ぎきれずに、ぶどうの房が焼けてしまうという声や、対策するための資材高騰によりどうしても価格を上げざるをえないという意見もあります。

避暑地として有名な、長野県や山梨県のぶどう農家さんは、他の地域よりも生育スピードや収穫時期の早まりを感じた方が多く、全国的な気温上昇が、ぶどうの生育に影響を与えていることがわかります。

自然相手でコントロールが難しく、ぶどうにとっても厳しい環境に変化し始めており、「対応できる対策は無いのでは?」と嘆く声も。今までの方法では太刀打ちできない状況になってきていることが伝わります。

注目度が増している「白系ぶどう」

ナイアガラ

数年前から、種がなく皮が薄く、そのまま食べられ、大粒で香りの良い「シャインマスカット」が人気ですが、ぶどうの色づきに着目すると、白系ぶどうは黒系ぶどうよりも着色不良が少なく、暑い気候でも比較的綺麗な色合いを保つことができます。

シャインマスカットも品種改良が進み、「イタリア」という独特で華やかなマスカット香を楽しめる品種や、「ナイアガラ」という柔らかくて果汁たっぷりの白系ぶどうが登場しています。

今回アンケートにご協力いただいたぶどう生産者さんの栽培品種は、33軒中32軒が黒系・白系ぶどうの両方を栽培しており、白系ぶどうのみを栽培している生産者さんは1軒でした。栽培のしやすさから、贈答用としてだけでなく家庭用としても人気な白系ぶどうの品種が、さらに増えていくかもしれません。

色づきや味の変化も、丸ごと”個性”として楽しもう!

ワイン好きの方には、毎年11月頃、その年のぶどうでできたワインを楽しむボジョレーヌーボーの解禁を楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。ワインの味は、言うまでもなく、その年のワイン用ぶどうの出来に左右されます。「今年のワインは酸味が強い」「フルーティーな味わいだ」など、その年の味の違いを楽しんでいますよね。

食用のぶどうに関しても、消費者側が「毎年、味の違いがあるのは当たり前」という意識になり、その年その年の個性を受け入れるようになると、ぶどうの新しい楽しみ方が生まれるのではないでしょうか。

今後、さらに温暖化が進んでいくと、ぶどうの旬が秋から夏へと、移り変わっていくかもしれません。今までにない厳しい環境下でも、ぶどう生産者さんは美味しいぶどうを届けるために、労を惜しまずに日々試行錯誤しています。生産者さんの想いと自然の恵みがまるごと詰まった”今年のぶどう”を楽しんでいきたいですね。

最後に

2024年の夏も全国的に猛暑が続き、残暑も引き続き残ることが予測されています。暖冬、梅雨の遅れ、猛暑、豪雨、真夏の酷暑など、農作物と生産者さんは、いち早く地球の変化を察知しています。

<ぶどうからみる地球>を考えながら、思いを馳せながら、 様々な品種のぶどうを楽しんでいただければと思います。

食べチョクでは、今後も「農家からみた地球」について、シリーズでお伝えしていきます。私たち食べチョクや農家さん、食卓で、今できることを長い目線で考えていけたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

「ぶどうから見た地球」以外にも、ぶどうに関する「知らなかった」「なるほど!」な情報を集めた特設サイトも公開中。今年の秋は、食べチョクと一緒に、ぶどうをさまざまな角度から見てみましょう。

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