
りんご農家さんに聞いた!<りんごからみた地球> すべての農家が気候変動や環境変化を実感。「りんごは赤い」が常識でなくなる日が来る?
食べチョクでは、2024年8月に、りんご農家さんに『りんごの栽培に関するアンケート』を実施しました。青森県、秋田県、山形県、富山県、長野県の24軒の農家さんにご協力いただきました。
このアンケートで明らかになったのは、気候変動や環境変化がりんご栽培に及ぼす深刻な影響です。すべての農家さんが、りんごの栽培を通じて「気候変動や環境の変化を感じる」 と回答。そして、「環境変化の影響を受け、対策を講じている」農家さんは21軒、「対策を検討中」の農家さんは1軒という結果となりました。
りんごから見た地球の「いま」
気温は確実に上昇している
今回のアンケートからわかった最も顕著な環境の変化は、気温の上昇です。24軒中19軒の農家さんが、「夏の猛暑」、「暑い日が続く」、「冷え込みが遅くなった」など、気温の変化を感じていました。
実際、観測データによると、青森県では2020年までの過去100年間で年平均気温が約1.9℃、長野市では約1.3℃上昇していることが確認されています。
おいしいりんごづくりには冷涼な地域が適しているといわれるなかで、気温上昇がりんごの栽培にどのような影響を与えているのでしょうか。
開花が早まり、収穫が早まる
気温の変化に伴い、りんごの開花時期が早まっています。通常、4〜5月に花が咲くりんごですが、春先の気温上昇によって開花が早まり、その結果、収穫時期も前倒しされているようです。
長野県の3軒の農家さんが、「開花が早まり、その分収穫も早まっている」と教えてくれました。また、開花に関する言及はないもの、青森県や長野県の他の農家さんからも、収穫や熟す時期が早まっているとの声がありました。
開花が早まることで増えるのが霜害のリスクです。今回のアンケートでも霜害が増えたとの声が聞かれましたが、りんごは、花が咲き始めると霜に弱くなるため、春先に「寒の戻り」があると霜害を受けやすくなります。花やつぼみが霜被害を受けると、小さな実や形の悪いりんごになってしまうことも。
りんごが日焼けする、赤くならない!?
最近は、夏になると日本各地で猛暑日が続きます。この暑さにより、りんごの見た目にも変化が現れ始めています。アンケートでは11軒の農家さんが、「りんごの日焼けが増えた」と回答。“日焼け”とは、りんごの果実に直射日光が当たり、表面温度が高くなって果皮の色が変色すること。おいしそうなりんごの特徴である、“赤くてりんごらしい色”を失う事態となっているのです。
「比較的早く取れる品種の日焼けが多く、商品になる数量が3年前と比べると4割減っている」とおっしゃる農家さんもいらっしゃいました。手間ひまをかけて一生懸命育てても、日焼けしたりんごは通常の出荷ができません。腐っていなければ加工用に回すこともできますが単価がかなり落ちるといわれています。
さらに、色づきにも変化が。約半数の農家さんが、「りんごの着色が悪くなっている」と教えてくれました。りんごの赤色はアントシアニンという成分に由来しますが、この色素は秋に気温が下がると着色が進むため、高温が続くとりんごが赤く色づきにくくなるのです。
農家さんからは、「糖度は上がっているのに色づきが進まない」「着色不良により贈答用の出荷が難しくなる」といった声が聞かれました。今食べている赤いりんごも、このまま温暖化が進行すると、まだ青い状態が食べ頃になるのかもしれません。消費者としては、赤いりんごの栽培は難しいということを知って、おいしいりんごが食べられる幸せを感じたいですね。
りんご農家さんの対策
日除け、品種変更、高所栽培‥あらゆる対策を実施
りんご農家さんは、このような環境の変化に対応するためにさまざまな対策を講じています。
短期的には、日焼けを防ぐために葉を取らない、りんごに遮断ネットをかける、除草の際に草の丈を長めに残すことで土の温度を上げないといった対策を実施。
一方、長期的な対策として、品種を変える、着色系品種は標高の高い場所で育てるなど、大規模な変更を行う農家さんもいらっしゃいました。実際に、8軒の農家さんが品種を変えると回答。「着色の悪い品種を伐採し、日持ちする黄色の品種に植え替えた」「暑さに強い品種に変えていく」、「低標高地向けの品種を導入した」という声が聞かれました。
しかし、気候変化が予測できないなかで、新しく植えた品種の採算が取れるまでには数年かかるため、今後も試行錯誤が続きそうです。農家さんは、おいしいりんごをつくり続けるために、予測できない自然を相手にしながらも、見えない未来を見据えて日々奮闘しています。
自然相手に、すべてを対策するのは難しい
夏の暑さはりんごだけでなく、作業する人にとっても大きな負担です。暑い日が多くなると、作業時間が限られてしまいますが、なかなか対策ができないといいます。
そして環境の影響は暑さだけではありません。「春の遅霜、夏の降水量のばらつき、台風の到来、豪雪、雪不足など自然相手にそれぞれ対策することは難しい」とおっしゃる農家さんもいました。たった1日の自然の変化で、その年の出来が大きく変わってしまうこともあります。収穫するまで気が抜けない日々から生み出されるりんごは、当たり前に食べられるものではないことを認識しながら、感謝していただきたいものです。
私たちの考える、「りんごのこれから」
温暖化が進むと、りんごが「秋」の果実ではなくなる?
今回のアンケートからは、青森でも長野でもりんごの収穫が早まっていることがわかりました。りんごにはさまざまな品種があり、通常、極早生種であれば8月上旬から、晩生種であれば11月頃から出荷されます。将来的に、収穫が早まることで、夏から冬までより長いあいだ旬のりんごを楽しめる可能性があるのは嬉しいですよね。
「りんごは赤い」がスタンダードでなくなる?
従来の着色時期に暖かい気温が続き、果肉が熟れているのに、果皮は着色していない状況がうかがえ、りんごを赤く色づかせるのが難しい環境になってきているようです。実際に、黄色の品種への植え替えも始まっています。
そのため、これからは、果皮の色のバリエーションが増え、りんご市場がより賑やかになることが予想されます。ぜひ、普段は手に取らない色のりんごも楽しんでみてください。食味と食感に新しい発見があるかも。
最後に
今回のアンケートで浮き彫りになったのは、気候変動がりんご栽培に与える深刻な影響です。りんごの開花や収穫時期、果実の色づきにまで影響を及ぼし、これまで当たり前だった「りんごは赤い」という概念も変わってくるかもしれません。
りんご農家さんは、日々環境の変化と向き合いながら、おいしいりんごを育てるためにさまざまな対策を実施されていますが、ひとつの果物を収穫するまでには多くの時間と労力が必要です。農家さんの情熱とこだわりが詰まったりんごを、ぜひ味わってでいただければと思います。
「りんごから見た地球」以外にも、りんごに関する「知らなかった」「なるほど!」な情報を集めた特設サイトも公開中。今年の秋は、食べチョクと一緒に、りんごをさまざまな角度から見てみましょう。
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