最優秀賞
長き芹の根
ほの甘し
夏井先生からの講評
芹を根っこまでふんだんに使って作るせり蕎麦。土を落として洗った根っこの白さや、葉や茎のシャキシャキした緑色、春の野から摘まれたばかりのような強い香気。芹を添えられた蕎麦の香りや、歯ごたえまでが自然と想像されてくる一句です。香りが凝縮した旬の芹の根はほの甘いに違いありません。
優秀賞
ほうれん草を
ゆでる母
夏井先生からの講評
「下宿先」のたった五音から、母が子の部屋へ来てまめまめしく手料理をする情景が目に浮かびました。野菜不足を心配し、たっぷり茹でる「ほうれん草」の香がこちらにまで届いてきそうです。
巻き毛のやうな
春きやべつ
夏井先生からの講評
春の陽の恵みを受けて緑に輝く春キャベツは、柔らかく渦巻く葉っぱや、葉脈のうねりはまさに天使の巻き毛のようです。「えんじえる」、「きやべつ」、のひらがな使いも楽しい一句となりました。
あらばあるだけ
日曜日
夏井先生からの講評
「にんにく」の香りも気にならない「日曜日」。「あらばあるだけ」使っている、ということはお昼の食卓かもしれません。家族皆で賑やかに囲む食卓と共に、にんにくの香りまで漂ってくるようです。
一升飯や
海苔黒々
夏井先生からの講評
食べ盛りの子供たちのいる食卓でしょうか。もうもうたる一升分の湯気と圧倒的なお米の香の前には、黒々と美味しそうな海苔があれば、何杯でも箸が進みます。一升もあっという間になくなってしまいそうです。
醤油一滴
ヤシロアキ
夏井先生からの講評
仮名の「ヤシロアキ」は、BGMでしょうか、鼻歌でしょうか。ポスターが貼ってあるのかもしれません。蛤に醤油を垂らし、飲んでいるのは温めの燗でしょう。なんとも演歌の世界にマッチして美味しそうです。
一般投票賞
菜の花やくるっと高く盛るパスタ
木ぼこやしき
桜鯛こりりと淡き真珠色
三月兎
蛤のあくびを誘ふ火のゆらぎ
ぐ
春たけのこ料金箱も土まみれ
北欧小町
蜜柑割る同じ苗字となりにけり
げばげば
蛤の砂吐く深夜ペンを置く
おこそとの
春いちご食べた恋愛線伸びた
夏村波瑠
噛めばまた すとんと逃げて 鍋の葱
もぐ
韮摘んで老後も払う所得税
あねご
はじめての船旅アスパラガスサラダ
りえ
夏井先生の総評
今回の総評コメントををいただきました
(俳人)